災害時の避難経路や避難場所を明確化する「ゼンリン自主防災マップ」
その製作過程と詳細な防災地図の価値について

大型台風や大雪の災害を経験した長野県佐久市田口下町区。
この地域の自主防災会では「ゼンリン自主防災マップ」を活用し、地域のリスク管理をレベルアップさせました。
いざという時の行動を迅速に、適切に行えるよう支援する自主防災マップが地域にもたらしたメリットについてご紹介していきます。

導入団体様

長野県佐久市田口下町区 自主防災会様

結成時期:

2008年

活動内容:

佐久市田口下町区における防災活動の啓蒙、災害時における避難行動の支援、平時における地域住民からの情報収集等

課題

台風や洪水、大雪など、地域の防災において
避難場所や避難行動が周知徹底されていなかった

ご依頼内容

地域内で情報の確認、共有ができる
オリジナル自主防災マップの提供

導入効果

災害に対する地域住民の意識向上
災害発生時の避難場所が明確化

はじめに

人口約10万人の長野県佐久市。その南部に位置する田口下町地区は古くから災害の少ない地域として知られていました。ところが平成26年には大雪災害、令和元年には台風19号によって大きな被害を受け、複数の千曲川支流や一般的な裏山である城山など、危険が及ぶ可能性のあるエリアが明らかになってきました。そこで地域住民らで構成される自主防災会では本格的な防災対策に乗り出します。

「大きな2つの災害を地域が経験し、他人事のように考えていた環境の変化について真剣に考えなければならないと感じるようになりました。そして曖昧だった地域の防災対策を確立する必要があると考えたのです」と会長の山本隆さんは話します。
そこで防災対策の一貫として導入したのがゼンリンの「自主防災マップ」でした。
災害時に頼りとなるのは、避難場所が明確になった地域の詳細な地図。
各家庭それぞれがどのような経路を辿って避難場所へ向かえば良いのかを、住民自らがあらためてリサーチ。
こうして集めた情報をひとつの地図に集約し、自主防災マップが完成します。
今後はこの自主防災マップを各家庭に配布するだけでなく、周知徹底のための活動を活発化。
いざという時の迅速かつ適切な行動につながるよう啓蒙していく予定とのことです。

課題

災害知らずの町に突然、大型台風が来襲

約150戸の家庭には高齢者も多く、いざという時に迅速な行動を取るのが難しい住民が数多く存在します。また長年この地に暮らす住民たちは、心のどこかに「田口下町地区は安全である」という思いがあり、災害の初期段階で避難するという行動を現実のものとして受け入れられない人が多かったのです。さらに、この地区付近では田口児童館、下町公会場、田口小学校と三箇所の避難場所が決められていますが、いざという時、どこか一箇所に住民が集中すればキャパシティオーバーのリスクをはらんでいます。

消防団の大工原(だいくはら)一明さんは「台風の際、避難先には皆さん迷われたと思います。避難場所のキャパシティの問題から私たち消防団もはっきりとここへ避難してくださいと言えない、どこが安全で収容人数に余裕があるかがわからない状況でした」と、当時の様子を語ります。
自主防災会の山本会長は「令和元年の台風19号では予想していなかった城山が崩れ、児童館に避難する住民が集中し、人が多すぎるということで小学校に避難し直すといった事態も発生しました。避難訓練も経験したことのない住民たちですから仕方なかったかもしれません」と話します。
そこで浮き彫りになったのが避難行動を支援する地域共通の防災マップの必要性でした。

取り組み内容

住民たち自らの手で作り上げる防災マップ
「ゼンリン自主防災マップ」の活用

ゼンリンでは、こうした課題に応えるべく、自治体配布のハザードマップなどでは把握しきれないその地域特有の防災マップを作成できる「ゼンリン自主防災マップ」を自主防災組織向け、世帯向けの2種類、提供させていただくことになりました。マップ作成用のキットを使い、自主防災会依頼のもと、4家族が各々の家から避難場所まで徒歩で危険箇所を確認。情報を集約することでこれまでになかった田口下町区内の詳細な防災マップが完成したのです。
その後、全世帯が利用できる各世帯用地図もテスト作成し、この地域における防災態勢が大きく向上しました。

写真は自主防災組織向けのA1地図

実際に徒歩で調査した結果を地図上に記載し、災害時リスクを可視化。

導入効果

災害の種別に適切な避難場所を認識
住民たちの災害対策への意識向上にも貢献

「台風19号の際、安全だと思われていた城山という裏山が実は、岩盤の上に堆積物が積もっただけの危険な山であることがわかりました。つまり大雨の際は城山の付近に土砂災害の恐れがあり、こうしたリスクをあらためて目視や地図で確認して意識を高めることができました」と話す山本会長。
また、いざという時のために設置された看板が子供の目線では見にくい位置にあることや、農業用水路に子供が落ちてしまうリスクなどを、実際に徒歩で確認することであらためて認識できたと自主防災会の皆さんは言います。大工原武市さんは息子夫婦、孫らと家族総出で避難場所までの経路を徒歩で確認。昼と夜といった異なる状況で歩いてみることで、家族全員が避難の難しさや環境の見え方の差異を再認識できたと話していました。「例えば避難場所として住民に知れ渡っている下町公会場は、裏に城山が迫っているため、実は土砂災害の時、危険な場所です。洪水や噴火の際はこの公会場が避難場所となりますが、地震や土砂災害には小学校や児童館に逃げてほしい、というメッセージが自主防災マップを通じてはっきりと伝えられると感じます」と山本会長。土砂災害警戒区域、土石流危険区域などのほか、蓋のない用水路や、崩壊すると非常に危険なブロック塀など、避難の際に避けるべきチェックポイントも地図上で明確になったそうです。
今後、この自主防災マップが住民の方々の意識向上につながる重要なツールとなっていくでしょう。

活用例

今後は各戸に自主防災マップの周知を徹底
マップ作成過程で新たなリスク要因も顕在化

コロナ禍により自主防災マップの周知徹底は今後の課題であるものの、各世帯にはこのマップの存在が知られるようになり、住民の災害に対する意識は高まっています。この自主防災マップを自宅に置いてもらうことで視覚的に避難場所への経路も浸透。いざという時の行動も早まるでしょう。なにより自主防災マップの作成過程において住民が実際に避難経路を体感したことは地域として重要な経験となっています。

またマップ作成によって、災害だけでなく防犯灯の必要性や立て看板の整備など、町の暮らしやすさにつながる意識付けも実現できました。「田口下町区では『ご近助(きんじょ)カード』というものを各戸に配布し、家族構成や避難が難しい方の存在などを詳細に書き込んでいただくことで、地域としての情報収集にも取り組んできました。このご近助カードと自主防災マップの組み合わせによって、より効果的な避難の誘導ができるようになると感じています」(消防団/大工原一明さん)。「避難場所や危険箇所などがデジタルデータとして地域住民の間で共有できるようになれば、防災ツールとしてさらに有効なものとなるのだろうと感じました。今後、そのようなサービスが提供されればうれしいですね」(菊池忠水さん)
全国各地の精密な地図情報を多くの方の安心につなげるべく、ゼンリンではこの自主防災マップを今後、一層、啓蒙し、防災ツールとしてより効果の高いものとなるよう検証、改善していく予定です。
ぜひご活用ください。

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