File 02 充電スタンド情報のデイリー更新 更新サイクルの壁に挑む。入社6年目に任されたビッグプロジェクト。/開発:中村 武

ゼンリンは、カーナビゲーションシステムに搭載される地図データ(ナビデータ)の開発を行っている。ナビデータの開発にあたっては、カーナビメーカーや自動車メーカーの要求に応えるべく、常日頃から各社と調整を重ねている。
中村が入社6年目にして担当したのは、大手自動車メーカーの電気自動車用ナビへ、充電スタンドの更新情報を「毎日」提供するというプロジェクト。ナビの更新は年数回というのが常識である中、これは前代未聞の試みだった。

プロジェクトの概要と業界の背景

私が担当した「充電スタンド365日配信サービス」は、電気自動車に搭載されたナビゲーションシステムに、更新された充電スタンドの情報を毎日配信していくというものでした。

当時はまだ電気自動車の歴史が浅く、外出先で車を充電できる場所が少なかったため、充電スタンドの情報はユーザーにとって最も必要なものでした。電気自動車の普及に伴い、インフラ整備が進み、毎日のようにコンビニ、ディーラー、スーパーなどに新しい充電スタンドができていましたが、ナビの情報を更新するのは年に数回というのが当時の主流。すぐ近くに新しい充電スタンドがあるのにナビにはその情報が更新されてなく、離れた場所にある充電スタンドを案内するという問題を抱えていました。そんな中、新しい充電スタンドがあればすぐに更新するというサービスは、当時としては革新的な取り組みでした。カーナビを起動すると、画面上に更新ボタンが表示され、ユーザーがそのボタンを押すだけで、自車位置の周辺の充電スタンド情報が更新されるのです。

充電スタンドの情報は、ゼンリンの調査部門が、現地調査などによって取得します。充電スタンドの位置だけでなく、料金や、使用できるカードについても調査し、データ化する。それを自動車メーカーに提供し、自動車メーカーから各端末へ配信されるという流れになっています。ゼンリンの中には、調査部門、調査した情報をデータ化する整備部門、それを自動車メーカーが望むフォーマットに組み替えるオペレーション部門があり、お客様と技術調整を行い、いただいた要求を元にそれぞれの部門と調整するのが私の仕事です。

自動車メーカーとの調整は、営業の担当者と二人三脚で取り組みました。費用や予算については営業担当が、技術面については私が、それぞれ分担してプロジェクトを進めていきました。

プロジェクトの過程〜努力と苦難の道のり〜

自動車メーカーから充電スタンドの情報をデイリーで更新したいと言われた時、社内では「そんなことができるわけがない」という反応でした。当時は4ヶ月に1回の更新が当たり前。実は、「デイリーで」と言われる前に一度「マンスリーで」という要望をいただきましたが、その時でさえ、実現困難に思ったのです。デイリー更新ともなると全くやり方の見当がつかず、「根本的に仕組みを変えないとできないだろうな」と社内の関係者全員が感じました。

運用フローを一から見直し、これまで調査部門から月に1度纏めて受け取っていた情報を、できたものからどんどん渡してもらい、データ整備部門に来たものはすぐにデータ化するという、ベルトコンベアーのような体制を作ってもらいました。この体制を整えたことにより、新しいデータが毎日休みなく配信されるようになりました。

自動車メーカーとのやりとりでも困難がありました。お互いが使っている技術的な「言葉」が違うのです。通常の取引は、自動車メーカーとゼンリンとの間にカーナビメーカーを挟みます。ゼンリンとカーナビメーカーは共通の専門用語がたくさんあるので話が通じやすいのですが、ゼンリンと自動車メーカーの技術担当同士が直接やりとりするのは、今回が初めて。ゼンリンがどういうデータ整備をしているのか、なぜデイリー更新が難しいのか、といった説明をするのに、かなり時間がかかりました。どう言えば、どう例えればご理解いただけるのかを追求し、お客様と信頼関係を構築することの難しさ・大切さを学ぶことができました。

プロジェクトの達成〜ゼンリンの強み〜

私は工学部出身で、入社後すぐ、開発部門の配属になりました。そのままずっと開発部門にいたわけではなく、3年目に一度オペレーション部門に異動して、5年目に再び開発に戻ってきたという経歴です。オペレーション部門での2年間は、正直なところ、自分にとっては試練でした。開発の仕事に適性を感じていましたし、技術的な素養を高めたいと思っていたので、希望と異なる部署へ配属になったことをなかなか受け入れられなかったのです。しかし、このときのオペレーション部門での経験が大きな財産となっていたことに、今回のプロジェクトを通して初めて気が付きました。

デイリー配信対応は「運用」が非常にネックでした。技術面の課題は自動車メーカーと調整し、合意することがゴールになりますが、運用面の課題については自社で解決する必要があります。「このデータとこのデータを組み合わせればもっと早くできる」とか「この人に話を持っていけば何とかしてくれる」とか、オペレーション部門での経験と人脈が非常に役立ちました。出身学部に関係なく様々な部署を経験することで、視野が広がり、横のつながりも生まれます。社内でのこういう体制が、ゼンリンの強みの一つだと思います。

また、今回は、ゼンリンの調査部門が収集した情報を補完するために、プローブ情報(※1)というビッグデータも活用して、充電スタンド情報を収集しました。その結果、ゼンリンの調査部門が収集した情報に、ほとんど取りこぼしがないことがわかりました。これまでのようにカーナビメーカーを挟むのではなく、地図データを直接自動車メーカーに届けるという初めての取引の中で、ゼンリンの情報収集力を証明できたわけです。担当者としては、仕事を落せない、ミスできない、短期間で調整しないといけない等、ハードルは決して低いものではありませんでしたが、このプロジェクトをきっかけに自動車メーカーとの直接取引が増えたことは、会社への貢献に繋がったと思います。

※1 実際に自動車が走行した位置や車速などの情報を用いて生成された道路交通情報

プロジェクトを通して感じた、ゼンリンが世の中に果たす役割

東京 開発本部 商品開発一部 DB開発二課 中村 武(なかむら たけし)

ゼンリンの強みは、精度の高い地図データを常に整備していること、それをカーナビメーカーや自動車メーカーから要求される形で柔軟に提供できることだと思います。開発部門には、地図の開発に特化した技術者がたくさんいます。お客様から「こういうデータを使いたい」という要望に対し、必要なコンテンツを探し、仕組みを考えて、「こんな風に使えばどうですか?」という提案する。お客様のニーズを理解し、その期待を超えるような新商品開発をしていければと思います。私自身も、もっとカーナビメーカーや自動車メーカーの立場に立った提案ができるよう、機会があればお客様のところで勉強してみたいと考えています。

未来に向けて、ゼンリンは、東京オリンピックが開催される2020年を目標に、政府も力を入れている「安全運転支援」に取り組んでいます。安心・安全な自動車社会をつくるという命題に向けて、これまでカーナビ用の地図データ開発で培った経験を活かし、自動車メーカーなどと協力して研究開発を進めています。将来は、「運転支援」の先の「自動運転」システムに欠かせない会社になっていると思います。

※掲載の情報は2015年2月現在のものです。

Page top