ゼンリン独自の住所データを活用し浄化槽台帳整備を支援 多数の浄化槽を抱える那須町で住民サービスの品質向上へ

私たちの生活に欠かすことのできない上下水道の維持・管理。そのうち下水道が整備されていない地域では、主に浄化槽を用いた生活排水の処理が行われています。国はこの浄化槽管理の強化のため、令和2年に浄化槽法を改正。各自治体に、浄化槽を管理するため台帳整備を義務付けています。こうした中、多数の浄化槽を抱える栃木県那須町では、効率的な浄化槽管理が実施できておらず、台帳整備が喫緊の課題でした。そこでゼンリンでは令和4年度から浄化槽台帳整備を支援。那須町の住民サービスの質向上に貢献しています。

独自データによる住所クレンジングで浄化槽の設置場所を最新情報に更新

最新の浄化槽設置場所を地図上に可視化し、継続的なシステム運用を実現

栃木県の各市町の台帳整備状況に関する情報のハブとなることで、県全体の整備推進に貢献

浄化槽の設置数が多い中、煩雑な管理からの脱却が課題に

私たちの生活に欠かすことのできない上下水道。その維持管理は自治体が担う重要な住民サービスの1つです。私たちが使う生活排水は、一般的に下水道を通じて生活排水処理施設に集められ、浄化された後、河川などに排出されます。一方、下水道が整備されていない住宅には、主に戸別に設置された浄化槽で生活排水が処理されています。このように浄化槽の維持管理を適切に行うことが、地域の生活環境全体の維持向上につながるのです。

浄化槽について、国では人口減少への対応や環境負荷の軽減、災害への対応などを目的に、下水道整備エリアを限定する一方、浄化槽整備推進区域を指定。管理を強化するほか、旧式の単独浄化槽から新式の合併浄化槽への転換を促進しています。これに合わせて、令和2年には浄化槽法を改正し、浄化槽を管理する台帳整備を義務化し、浄化槽台帳の作成・維持管理の徹底を自治体に求めているのです。

こうした中、栃木県那須町では旧式の単独浄化槽が残されており、また浄化槽管理が紙ベースで行われるなど、その運用の抜本的な見直しも必要でした。
※栃木県では浄化槽管理業務を全25市町へ権限移譲されております。

そこでゼンリンでは令和4年度から、地図システムを活用した浄化槽台帳整備をご支援することで、那須町の住民サービスの品質向上に貢献しています。

今回は、那須町上下水道課くらし給排水係長の深澤仁様に、ご依頼に至った経緯や台帳整備後の運用効果について、営業を担当した関東自治体営業課の郡司尚彦と共にお話を伺います。

―― 浄化槽台帳整備をゼンリンにご依頼いただいた背景について教えてください。

深澤様(以下敬称略):

那須町では浄化槽の利用率が高いにもかかわらず、従来の管理が紙を基本とした煩雑な方法だったことが、依頼に至った大きな要因です。

今回の法改正を機に、長期目標として那須町の浄化槽全約12,000件のうち約2割にあたる単独浄化槽を一元管理し、合併浄化槽への転換率100%を目指すチャンスととらえて取り組みに至りました。

ゼンリン独自の住所データで台帳整備を支援

―― 那須町様の課題に対して、ゼンリンとしてはどのような提案を行ったのでしょうか。

今回の台帳整備フロー。当社の住宅地図情報を活用し、台帳上の住所を最新情報にクレンジングした。

今回の台帳整備フロー。当社の住宅地図情報を活用し、台帳上の住所を最新情報にクレンジングした。

郡司:

那須町様の状況を伺いながら、浄化槽台帳整備をご支援する提案をしました。内容としては、①台帳の作成と情報の最新化 ②台帳項目の一元化 ③地図システムでの管理 ④維持管理情報の更新、という4つのステップで取り組むことをご提案しました。

まず浄化槽設置場所(台帳)の更新ですが、新築、滅失、あるいは町名変更等による住所変更と管理者(所有者)の異動などにより変化します。そこで、県浄化槽協会による法定検査情報と住宅地図データ(最新・過去)との突合作業を機械処理した上で目視確認を行い、二段階での確認を行った結果、全体の98.7%の浄化槽設置位置が概ね把握できました。
加えて正確な設置場所の座標を最新の住宅地図データ上に落とし、現在の位置情報から最新の住所や管理者情報を更新する作業を実施。これはまさに当社だからこそ実現できた手法です。

その上で、維持管理の情報を設置情報データに紐づけて一元化。これらのデータを地図システム上で管理することで、どの建物にどのような浄化槽が設置されているのか、住宅地図上で把握できます。さらに収集された保守点検や清掃、法定検査の実施状況をデータに紐づけるなど、台帳の更新まで今後継続してサポートします。

過去の住所情報と突合できることが決め手に

―― ゼンリンへの依頼の決め手になった要因について教えてください。

那須町上下水道課くらし給排水係長 深澤 仁氏

那須町上下水道課くらし給排水係長 深澤 仁氏

深澤:

最新の住所情報は頑張れば職員でも確認できますが、過去の住所情報が活用できるのはゼンリンだけで、これが最終的な依頼の決め手になりました。町としても住宅地図やGISなどを長年活用してきたこともあり、ゼンリンという会社への安心感があったこともきっかけの1つだと思います。

とはいえ、台帳整備するための予算化は簡単ではありませんでした。予算要求は根拠となる情報が必要なためです。財政担当者を説得するための材料は、郡司さんにも提供してもらいつつ、他の自治体の担当者にも台帳整備についてヒアリングしながら、他の自治体での状況や実績を集めたことにより予算確保につながりました。
 

郡司:

私自身も深澤様の立場になって、財政担当者から聞かれることを想定して取り組んだほか、自治体様の不安感を解消したいと、他の自治体様の台帳整備の進捗状況や方法を聞いて、情報共有に努めました。

自治体の悩みや疑問点を先回りして導入を支援

関東自治体営業課 郡司 尚彦氏

関東自治体営業課 郡司 尚彦氏

深澤:

県の環境保全課にもアプローチしていただいたことも、依頼への後押しになりました。町から県に直接聞きづらい内容もあるので、第三者の立場からヒアリングしていただいたのは助かりました。自治体の悩みや疑問点を事前に情報収集してくれるなど、郡司さんの人柄も導入の決め手になったと思います。
 

郡司:

台帳が整備され生活環境がさらに改善されれば、地域に暮らす住民の皆様への行政サービスの品質向上にもつながると思うのです。栃木県全体の浄化槽台帳整備が1日でも早く進むよう、情報収集に奔走しました。

必要な情報を瞬時に検索でき、大幅に工数を削減

―― 実際、台帳整備後の効果はいかがですか。

深澤:

住宅の名称や浄化槽の設置状況といった情報は、導入した地図システムの検索機能を活用し数秒で把握できるようになりました。これまではExcelで名義を調べて載っている台帳を探す作業が発生していたので、問い合わせ対応はとてもスムーズになりました。

あとやはりゼンリンの住宅地図は見やすいということで、現場に出向く職員が訪問時や通常業務にも使っています。今後もさまざまな場面でしっかり活用していきたいと思います。

浄化槽台帳から行政サービスの品質向上へ

―― 保守点検や清掃の情報収集が進んでいると伺いました。苦戦されている自治体様が多い中で、工夫された点などはありますか。

深澤:

提供いただく業者にも、丁寧に説明した点は大きいと思います。依頼する際には町長名義で文書を出した上、環境行政の一環で法改正によるものだという説明も書き添えました。収集には苦労した部分もありますが、最終的にすべての業者から情報提供していただけました。

―― 今後の活用についても教えてください。

深澤:

結果的に早く浄化槽台帳が整備され、合わせてシステム導入ができました。これを好機として今後は保守点検や清掃情報を定期的且つ積極的に収集し、台帳の更新を含めた維持管理に取り組みたいです。ひいては合併浄化槽への転換促進や、生活排水処理の向上をはじめとした、住民サービスの品質向上に努めていきたいと思います。

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