「自助と連帯」を重視し、地域社会と深くかかわりながら、組合員の「くらし」に寄り添う生活協同組合。コープ東北サンネット事業連合様では、1995年の発足以来、「地域に根ざし、誰もが利用し続けられる事業・サービス」の構築と維持を目指し、東北6県における地方事業連帯を推進している。
県境を越えた新しい試みは徐々に浸透し、組織もより進化していく中、2011年3月11日に東北地方を東日本大震災が襲った。

ゼンリンの商品を導入した背景

建物や道が失われた沿岸部や仮設住宅で、 「生協を待つ被災者」に、いち早く届けるために

東日本大震災は、コープ東北サンネット事業連合様(以下、東北サンネット)が本部を置く宮城県仙台市周辺にも甚大な被害をもたらした。ライフラインが寸断され、沿岸部では津波の影響により、それまでの地形が激変。東北サンネットでも、職員16名が亡くなり、沿岸部では半壊する店舗も出るなど、組織として非常に厳しい事態に陥った。

佐々木 氏

「それでも、被災した加入世帯へ食料や灯油などを一刻も早く届けなくてはなりません。駆けつけてくれた他府県生協からの人的・物的サポートを受けつつ、「生協を待つ被災者」の居場所を確認し、「日常を取り戻していただくためのお手伝い」をすることが我々の急務でした。」

東北サンネット本部の位置する宮城県では、生協の加入世帯率は日本一。県内全世帯の7割が加入しており、生協によって「人々の暮らし」が支えられている面は大きいが、未曾有の大災害がもたらした傷跡は深刻なものだった。

佐々木 氏

「商品を積んで配送に出かけても、県の沿岸部では今まで目印にしていた建物などが津波によって流され、跡形もなくなっています。また、仮設住宅に入所した世帯も多かったのですが、宮城県内で言えば仮設住宅は2万戸以上あり、さまざまな地域に点在していました。それらは公園や空き地などに急造されたため、所在地や名称などが不明瞭であったり、中には住所を持たない仮設住宅もありました。位置情報に関するソースと言えば、自治体が仮設住宅の入居者に配る紙のプリントだけ。情報共有や管理が難しく、自治体によってはプリントが入手できない場合もあるのが難点でした。」

家を失い、日用品や食料など事欠いているであろう加入世帯へ、頼まれた商品を届けたくとも、なかなかスムーズに配送できない状況が続いたという。

ゼンリン商品の決定理由

いち早く掲載された「震災関連情報」が決め手 仮設住宅名称による検索が可能に

東北サンネットでは、以前からゼンリンの住宅地図データベースZmap-TOWNIIを利用した顧客管理システムを使用している。こちらは地図上に加入世帯がプロットされ、配送曜日ごとに色分けされて表示されるなど、「顧客台帳」としての性格が強いシステムだ。
しかし、震災後は地形に変化が生じたり、被災した組合員が自宅を離れて仮設住宅へ入居するケースなどが続出したため、既存の地図では対応できない部分が出てきた。

一方、震災の直後から、ゼンリンでは被災地における仮設住宅の地図情報整備を開始。2011年12月には住宅地図ネット配信サービス「ZNET TOWN」をリニューアルし、「震災関連情報」を掲載し始めた。

庄子 氏

「ZNET TOWN導入の決め手となったのは、やはり仮設住宅に関する詳細な情報です。震災後の混乱の中で、空き地などに建設された仮設住宅の中には「無番地」のものもあったため、住所検索だけでは目的地を割り出すのが難しいケースもあったのですが、ZNET TOWNは地名や施設名などの文字列による検索にも対応しています。『○○公園仮設住宅』『××中学校仮設住宅』といった文字列検索ができること、さらには仮設住宅に入居している方の名前が確認できることは、震災後の混乱の中での誤配や遅配を防ぐことにつながり、現場にとって非常に画期的でした。」

導入による効果

「初めて行く場所」「初めて行く人」を 正確で詳細な地図情報がサポート

震災後は、地域のスーパーや個人商店の通常営業再開まで時間がかかったこともあり、組合員の間では食材・日用品の個人宅配や、調理済みの惣菜や弁当、重いものの配達などにも対応した「ふれあい便」の需要が高まった。また生協のこうした既存サービスが再評価され、これまで利用経験のなかった仮設住宅の入居者などから、「説明を聞きたい」「加入したい」という問い合わせのケースが増えたという。

スタッフ・職員自らも被災し、震災後の不安や混乱を十分に理解している東北サンネットでは、仮設住宅などから初めて生協を利用しようとする人の問い合わせに対して「いかにスムーズに対応できるか」といったことを非常に重要視していた。

庄子 氏

「問い合わせをしてくる方々は何らかの不自由を抱え、"すぐにでも利用したい"という場合が多いのです。スタッフが仮設住宅の名前や住所からZNET TOWNを参照し、初めての場所でも直ちに位置情報を把握・訪問できるようになったことはサービスの向上にもつながりました。また、顧客管理に使用しているZmap-TOWNIIの情報と合わせて調べれば「うちの仮設へは何曜日に配達に来るのか?」という質問に対しても、すぐに答えることができます。「通りの右側と左側で配達日が違う」といったケースは良くありますから、その「通り一本の差」を、ZNET TOWNから瞬時に判断できるのはとても便利です。」

実は、平常時であれば、配送担当者など現場のスタッフにとって、ZNET TOWNのような配信型の地図は必ずしも必需品というわけではない。というのも、生協では配送スタッフの担当地域があらかじめ決まっており、決まった曜日に同じルートで自分の担当地域を回る、という方式が一般的。一度ルートを覚えてしまえば、普段は地図を参照せずともスムーズな配送が可能なのである。

佐々木 氏

「しかし、今回の震災では我々事業者にとっても予想外の事態が起こりました。まずは地形の劇的な変化による混乱。そして、事業者であるわれわれ自身も被災したことです。出所したくてもできないスタッフも多かったですし、これまでドライバーが一人で回っていたような地域でも、安全性に配慮し二人体制を導入したため、スタッフの数が足りなくなる事態が発生しました。フォローのため担当外地域の支援に回ったスタッフには、当然ながら土地勘やルート知識がありません。ZNET TOWNは、そうした状況への対応に役立ちましたね。」

今後の展開

タイムリーで鮮度の高い地図情報を活用し くらしの復興支援に更なる勢いを

佐々木 氏

「現在はZmap-TOWNIIの地図上に加入済世帯の位置情報をプロットし、顧客台帳的に活用していますが、今後は「生協への加入意志のない世帯」についても、地図上に表示できるようになれば、と思っています。たとえば、勧誘を何度も断っているのに、その情報を知らないスタッフが訪問を繰り返し、うっかり不快な思いをさせてしまうようなケースはなるべく避けたい。」

こうした細やかな配慮は、多くの人が財産や家などを失った大災害後には特に重要かもしれない。

佐々木 氏

「また、現在はZNET TOWN のみに対応している震災関連情報ですが、将来的にはZmap-TOWNIIへも反映されると良いですね。最近では被災した組合員が仮設住宅を出て自活を始めたり、津波で浸水した自宅の二階のみで生活しているケースがあり、これまで人の住んでいなかった高台に家が建ち移住するケースなども増えていくと思います。こうした人々の暮らしをサポートするため、現地の状況に合わせた、常にタイムリーな地図情報があればと思います。」

災害の起きた地域における表札調査などは、被災者のプライバシーに細心の配慮が必要になるなど、現地の地図調査員にも負担が大きい。しかし、被災地の実情に沿った地図情報をしっかりと更新していくことが、東北サンネットをはじめ、被災者の暮らしを支える事業者の業務をサポートし、結果的には復興支援の一助となるはずである。

現在はZmap-TOWNIIにも震災関連情報が反映されているため、Zmap-TOWNIIを利用したシステムに業務が統合されています。

生活協同組合連合会 コープ東北サンネット事業連合 共同購入運営本部 
課長 トレーナー
佐々木 真 氏
「地図情報をはじめ、今後は災害による停電に対応したシステム作りが課題です。」

庄子 智浩 氏

みやぎ生活協同組合 共同購入運営部 南支部
営業担当係長
庄子 智浩 氏
「被災された加入世帯が、一日も早く日常を取り戻すためのお手伝いをしていきたい。」

Zmap-TOWNIIを利用したインターフェース

Zmap-TOWNIIを利用したインターフェース。加入世帯の位置情報が配達日ごとに色分けされ、掲載されている。

仮設住宅名称検索画面

仮設住宅名称の検索にも対応。自宅を離れ避難生活を送る加入世帯に、「必要なものを迅速に届ける」ことを可能にした。

個人宅配や、お惣菜、重量物にも対応した「ふれあい便」

被災地・宮城の生協加入世帯率は全国No.1。個人宅配や、お惣菜、重量物にも対応した「ふれあい便」など地域密着型サービスを提供。

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