防災ハザードマップやマイ・タイムラインの作成などを経て、住民の危機管理意識が向上。 安心安全なまちづくりの基盤が強固に。

(インタビュー :総務課 防災生活係 梅村 理史 様)

北海道南部に位置する江差町は北国特有の雪害に加え、河川の氾濫や海洋における津波のリスクと常に対峙しています。また、2022年10月には人口が7000人を割り、住民の高齢化も進むなか、災害時の避難行動啓蒙は益々、切迫した課題として認識されていました。そこで江差町役場はゼンリンをパートナーに迎え、防災ハザードマップの刷新に取り組みました。これによって、住民の皆さんの意識や防災の体制がどのよう変化したのか、江差町総務課防災生活係 梅村理史氏にお話を伺いました。

課題

2級河川である厚沢部(あっさぶ)川の氾濫や津波などのリスクに対し、住民の適切な避難行動を支援するツールの導入や、住民の危機意識醸成に有効な啓蒙活動が課題に。

ご提案内容

防災ハザードマップと、避難行動計画(マイ・タイムライン)作成支援。
さらに、住民向け防災ワークショップ開催にあたり、その効果を最大化する内容のご提案。

導入効果

起こりうるリスクの周知、災害の種類や警戒レベルに応じた適切な避難場所の認知向上、避難行動のプロセス周知を実現。
加えて、防災ハザードマップ作成過程における町役場と住民との有意義な意見交換を複数回、実現。

背景

江差町は北部の厚沢部川による氾濫、日本海に面する地域の津波、そして寒冷地特有の雪害など、常に自然災害のリスクがつきまとう。

かつては、2級河川である厚沢部川の氾濫を経験した江差町。津波や雪害の危険性に加え、土砂災害警戒区域は128箇所も存在し、常に自然災害のリスクと隣合わせの地域だと言えます。また、住民の高齢化も進む一方で、災害発生に備えて避難行動啓蒙や、災害の種類や警戒レベルに応じた適切な避難場所の認知向上が町に求められ、平成30年には総合ハザードマップを完成させました。ところが近年、各地で発生する激甚災害へ対応すべく、今までの「50~150年に一度」から「1000年に一度」の大雨を想定したハザードマップを全国自治体において作成するよう、国の指針が打ち出されました。そこで江差町では、防災ハザードマップの改訂を予算化し、入札を執行。ゼンリンが落札業者となりました。

【課題】

住民の危機管理意識を高める次の一手を模索

自然災害の脅威と対峙してきた歴史から、住民の皆さんには防災への高い意識が既に醸成されていたものの、大雨などの危険な状況下においても「自分の住居は大丈夫」というような「正常性バイアス」が働き、避難行動が遅れてしまう可能性について、町役場としては危惧していました。そして、気候変動の影響が年々、顕在化していくなか、どのような災害においても住民に迫る生命の危険を可能な限り排除するため、有効なツールの導入や災害に対する知識啓蒙活動が急務となっていました。

【提案内容】

防災ハザードマップとマイ・タイムラインの作成支援や防災ワークショップの開催

そこで、当社から提案したのが、住民の皆さんが直感的に理解しやすい新たな防災ハザードマップの作成支援と、マイ・タイムライン作成支援、専門講師による防災ワークショップといった、防災に係る包括的な取り組みです。ご高齢の方々でも理解しやすい縮尺、大きいフォントを採用し、避難場所が確認しやすいようにレイアウトを工夫した防災ハザードマップや、マイ・タイムラインの記入フォーマットを提供。また、防災ワークショップ内でマイ・タイムライン記入方法を丁寧にレクチャーするなど、住民の皆さんと江差町とが一緒になって、マイ・タイムラインの作成に取り組みました。

令和4年3月に完成した全36ページの防災ハザードマップ改訂版

マイ・タイムラインは別紙で記入見本と共に提供

【導入効果】

自宅と避難場所との距離や位置関係をしっかり理解。防災に関する住民と役場との意見交換も活発に。

防災ハザードマップやマイ・タイムラインに加え、防災ワークショップに住民の皆さんが参加することで、リスクの高い区域の周知や、自宅と避難場所との距離や位置関係の理解、避難すべきタイミングといった生命を守るための知識が一層、深まっていきました。
また、ゼンリンがこうした防災・減災ソリューションをご提供する過程では江差町役場と住民の皆さんとの防災に関する活発な意見交換も行われ、備蓄や防災情報発信ツールの拡充といった新たな課題も顕在化。住民の皆さん、江差町役場双方に、災害対策においてこれから達成すべき目標が明快となり、安心安全なまちづくりの基盤がより強固なものとなっていきました。

防災ハザードマップ作成にあたり開催された、町内会向けの説明・検討会

マイ・タイムラインの作成指導のほか、双方に有益な意見交換も行われた

【活用例】

防災関連ツール導入やワークショップでの経験がリアルに起こった大雨時の避難行動に直結

防災ハザードマップの完成、防災ワークショップ開催などを経た直後の2022年6月下旬、連続する大雨の影響で厚沢部川が氾濫危険水位にまで増水。災害対策本部を中心に、複数の区域に対して高齢者等避難の伝達や、避難指示の発令がなされました。

令和4年の6月下旬の大雨で、氾濫危険水位レベルまで達した厚沢部川

全国における一般例では避難指示に対し、約2割程度が実際に避難行動を起こすとされているところ、この大雨時には避難すべき対象者のうち約3割の方々が避難を実行されました。「結果として、防災ハザードマップの配布やワークショップによる意識向上が、住民の皆さんの積極的な避難行動に繋がっていったのではないかと思われます。」と梅村氏。町役場の分析では、思い込みや勘違いによる避難場所選定ミスなども減少し、適切に高台の避難場所を選択できた住民の方々が多く、防災ワークショップの成果が早くも表れた事例となりました。

また、防災ハザードマップの周知徹底という大きな目標のもと、町役場が地域住民と共に行う防災勉強会も各地域で積極的に開催され、マップ作成による直接的、間接的な影響により住民の皆さんの防災意識は高まり続けています。将来的には、定期的に町内全体での避難訓練や防災ワークショップを定期開催したい、という構想も出てきています。
防災に「完璧」という言葉はありませんが、有事の際に自助・共助・公助が連携することで限りなく「100%」に近い活動になる、そのためには今後も住民と対話を重ね、双方向で災害時における備えを万全にしていきたいと江差町は考えています。

自治体関連お問い合わせ

ゼンリンでは、このような各自治体の意向を十分に反映させた防災ハザードマップ作成支援や、
防災ワークショップの開催などに協力していきたいと考えています。
住民の皆さんが安心して暮らせる環境づくりを、全国各地で加速させていくため、
ゼンリンの防災に係る各種取組みをぜひ有効活用いただければと思います。

自治体

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