3D地図データで向上する、建物建設前の風環境シミュレーション

近年、建築物を建てる際に、建物周辺の風や気流のシミュレーションを行うことが増えています。株式会社アドバンスドナレッジ研究所様(以下、アドバンスドナレッジ研究所様)は、そのシミュレーションソフト「FlowDesigner」を提供している企業。同ソフトには2015年からゼンリンの3D地図データが組み込まれ、風環境の解析を精緻かつ分かりやすく、短期間で行うことを可能にしました。

課題

風環境解析に必要な周辺モデルの精度とリアルさ
周辺モデル作成の時間増大による解析作業の圧迫

ご提案内容

高さや街並みも再現し、VR(※1)化も可能な高精度周辺モデル
日本全国のデータを整備し、作成時間を大幅短縮

※1 VR:バーチャルリアリティ「仮想現実」の意味

導入効果

短期間に作成でき、直感的に理解できるアウトプット
リアリティが増し、販促資料にも活用

導入企業様

株式会社アドバンスドナレッジ研究所

株式会社アドバンスドナレッジ研究所

所在地:東京都新宿区
設立年:1998年
資本金:1,500万円
主な事業内容:熱流体解析ソフト「FlowDesigner」の開発・販売、気流解析・温熱環境解析の解析コンサルティング

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[課題]シミュレーション前の周辺モデル作成における、精度と作業時間

環境意識が高まり、BIM(※2)も主流となる中、建築物を建てる際に周辺環境のシミュレーションが求められるようになりました。たとえば最近は、高層建築物を設計する際に、精度よく風の流れを事前評価するためには数百メーター程度の広域な形状データが必要となります。

特に高層建築物は、設計次第で周囲に強いビル風を生むなど、人への危険や住環境の悪化をもたらす可能性があります。

アドバンスドナレッジ研究所様の「FlowDesigner」は、建物内の空調や自然通風の解析から屋外の風環境解析まで、風の流れをシミュレーションできます。昨今ニーズが増えつつある屋外の風環境解析では、シミュレーションにあたって周辺の建物や地形モデルを再現する必要があり、以前はソフト内のモデル作成機能で手作りしていました。

それらは一般で公開されている地図情報をもとに作成していましたが、建物の高さや高架下の構造、地形の起伏など、風に影響を与える情報の正確性や情報量が不十分でした。作成されるモデルも全て似た色合いで、どの街のどの部分か一目で分かる精度にはなりませんでした。

また、風の解析をするには広範囲のモデルが必要です。数百m四方の建物や地形をすべて作成するには数日かかり、島や団地などの大規模建設に至っては、モデル作成で1ヶ月近く要することもありました。そこでその課題に対して、3D地図データの活用を提案しました。

※2

BIM:コンピューター上に現実と同じ建物の立体モデルを再現し、業務効率化や細かな情報管理を行える建築業界の新しいワークフロー

[ご提案内容]建物の高さや街並み。3D地図データのリアルさによる高度なシミュレーション

解析前の周辺モデル作成という課題に対し、当社から3D地図データの活用を提案。日本全国の最新3Dデータを整備しており、周辺モデルとして活用することで、工数と時間が大幅に削減できる点を伝えました。

アドバンスドナレッジ研究所様では、工数はもちろん、モデルの精度やリアリティの面でも魅力を感じたとのこと。3D地図データは各建物の階数情報が整備されており、高さに反映されています。風の解析において建物の高さは重要になるため、非常に有効でした。また、それまではモデル作成に時間がかり、精度のチェックや細部の作り込みにかける時間を確保しにくかったのですが、3D地図データはその点の向上も見込めるため、導入が決まりました。

現在、3D地図データは屋外風環境解析に使われており、その結果をVRで見るサービスも生まれています。もともとアドバンスドナレッジ研究所様では、よりリアルで直感的な解析結果のアウトプットを模索していました。FlowDesignerでは、3次元データによる解析の特長を活かし解析結果をVRで確認する機能が備わっているため、VRは有望な手段でしたが、それには実際の街並みに近いモデルが必要。その点で、街並みの色合いや配置まで精緻に再現した3D地図データが大きく貢献しました。

なおFlowDesignerに取り込む際、3D地図データのFBX形式では解析が難しかったのですが、別形式に変換することで可能に。以降も、さらにスムーズな変換形式を両社で構築しています。

[導入効果]わかりやすいアウトプットで、販促資料にも有効

風は身近でありながら目に見えないため、シミュレーションでは一目で直感的に分かる作り込みが必要でした。3D地図データは、現実に近い街並みで表現するため、視覚効果にも大きな違いをもたらしました。実際、それまでは専門家を対象に見せていたシミュレーションが、一般の方にもわかりやすいものと進化したそうです。起伏や建物の高さもより精密になったため、精度も向上。また、1ヶ月近くかかったモデル作成の時間も1時間程度に短縮できたため、様々な設計案の比較検討に時間を費やせるようになりました。

なお、解析時のリアリティが高まり、よりインパクトのある映像になったことで、販促資料やコンペティションの資料としても活用しやすくなったとのこと。3D地図データは、さまざまな方面で役立っています。

[活用例]風や熱の見える化ツールとして研究者・設計者以外への活用展開も見据える

現在は、主に風の環境解析に3D地図データが使われていますが、FlowDesignerは日射や音の解析もできるため、3D地図データとの組み合わせでヒートアイランド現象(※3)や騒音問題の解決にも有効と考えられます。これまでは、大きな工数を要すためにその解析を満足にできなかったものが、周辺モデルの作成が容易になったことで、3次元の詳細な解析もより身近なものとなりました。さらに、低コストかつ簡単にシミュレーションができることで、マンションや一戸建て住宅を購入する一般消費者に対しても、判断材料として提供することが可能になるかもしれません。

より暮らしやすい街や環境を作るために、今後もその一助として、当社の3D地図データを提供していきます。

※3

ヒートアイランド現象:アスファルトやビルの密集により、都市部の気温が高くなる現象

導入事例リーフレットダウンロード

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当社が携わらせていただいた実際のプロジェクトをご紹介

建物周辺の風の動きをシミュレーションする解析ソフト「FlowDesigner」を開発・販売する株式会社アドバンスドナレッジ研究所。風解析が暮らしにもたらす効果や可能性を紐解いた。

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