3D地図データを活用して都市の風の流れを素早く見える化
訴求力の高い熱流体シミュレーションソフトを実現
株式会社アドバンスドナレッジ研究所(以下、アドバンスドナレッジ研究所様)は、熱流体シミュレーションソフト「FlowDesigner」の開発販売を行なっています。
建築設計時に風と熱の流れを可視化する熱流体シミュレーションは、設計者にとっても施主にとっても貴重な情報ですが、正確なシミュレーションを行うには、建築予定地周辺の建築物を正確に再現しなければなりません。
そこで導入されたのが「3D都市モデルデータ」。同社の業務をどう変えたのか、ご紹介していきます。
課題
シミュレーションのベースとなる
街区の建築物データの質的向上と
データ入力に要する
膨大な工数とコストの削減。
ご提案内容
任意の位置を起点に、
現実の町並みを忠実に再現した
3D都市モデルデータをご提供。
導入効果
都市空間を広域で捉えた
熱流体シミュレーションに
必要な建物の正確な3Dデータが
取り込めるようになり、
工数・コストが大幅に削減した。
導入企業様
株式会社アドバンスドナレッジ研究所様
所在地:東京都新宿区
資本金:1,500万円(2021年11月現在)
従業員数:20人(2021年11月現在)
事業内容:熱流体解析ソフト「FlowDesigner」の開発・販売、気流・温熱環境の解析コンサルティング
【関連記事】都市の風の流れを素早く見える化。訴求力のあるプレゼンテーションで気流シミュレーションの概念を変えた決断
はじめに
建物の環境設計の付加価値をビジュアル化するうえで、無視することができない熱流体シミュレーション。
株式会社アドバンスドナレッジ研究所は、この熱流体シミュレーションソフトの開発・販売を行なっています。
かつては研究用途向けがほとんどでしたが、もともと大手電機メーカーで空調設計に従事していた同社創業者が、使いやすい熱流体シミュレーションソフトがほしいと自前で開発することを決意し、独立。
2003年にリリースされたFlowDesignerは、使いやすさが大いに評価され、右肩上がりで利用者が増えていました。
熱流体シミュレーション例
幹線道路の強風対策として、道路沿いに樹木を配置した場合のシミュレーション比較動画の一場面。
樹木配置後に風の流れや強さが変化している事が分かる。
樹木配置前
樹木配置後
【課題】3D地図データ作成における品質向上とコスト削減
建物に吹き付ける風は周囲の環境によって大きく変わります。
何もない場所であれば北から吹く風も、地形や隣接する建物によっては、回り込んで南から吹いてくることもあり、正確に状況を把握するためには、広域で風の動きを捉える必要があります。
そのために必要なのが、街の正確な3Dデータ。熱流体シミュレーションを行うたびに、ユーザーは手書きで地図を作成する必要がありました。国土地理院で公開されている地形データの上に建物の形状を描き、インターネットの地図サービスから標高データを入手。都心部では数千棟の建物を描くのに数日かかり、結果的にソフト利用のコストは上昇。
しかもようやく街のモデルができあがっても手書きだけにミスはつきもので、品質の確保を考えるうえでも抜本的な対策が求められていました。
【ご提案内容】正確かつリアルな町並みを再現した「3D都市モデルデータ」導入のご提案
そこで当社にご相談いただき、「3D都市モデルデータ」のご利用をご提案しました。
同データは、詳細地図情報と専用車両で計測したデータにより、現実の街並みをテクスチャ付きで忠実に再現。
現在は、国内21都市の3D都市モデルデータが整備されています。
シミュレーション作成時のボトルネックとなっていた地図の手書き作業を省略することができ、FlowDesignerの普及を後押しできると考えました。
■導入前
■導入後
【導入効果】大幅な工数削減に加え、リアリティあふれるテクスチャでプレゼンテーションのクオリティもアップ
エリアを指定してダウンロードするだけで正確な3D都市モデルデータを手に入れられるようになり、ご自身で地図データを作成する手間が不要になりました。
FlowDesignerを利用しているユーザーの中には、シミュレーション上での地図データ再現が大きなハードルとなり、有用性を感じながらも検討を諦めていたケースも少なくありませんでした。
加えてプレゼンテーション力もアップ。
ゼンリンの「3D都市モデルデータ」は、各種センサーや全方位カメラを搭載した専用車両により、建物の形状や質感、道路の交通標識や路面ペイントまで収集しています。
これらをもとに作成されたテクスチャは、まさにVR(バーチャルリアリティ)で、街を歩いているような感覚でのシミュレーション体験を実現。クオリティの高いプレゼンテーション内容で、施主らに対する訴求力を大いに高めることが可能になりました。
東京駅周辺の360度風環境シミュレーション例
【活用例】各種シミュレーションを統合したBIMソフトへ
今後、アドバンスドナレッジ研究所様では、FlowDesignerとBIMソフト・3次元システムとの統合を目指していくことを計画しています。
建築設計をするうえでは、風だけでなく、採光や人の流れ、耐震なども検討に加える必要があります。
現状では、その都度別のアプリケーションを立ち上げてシミュレーションを行なっていますが、将来的にはBIMソフト上でタブを切り替えるだけで各シミュレーションができるようなものに収斂していくとみられており、同社もそこへ向けた最適化を計画しています。
そのベースとなる3D地図データは、マクロな視点で空間を素早く正確に再現ができる必要があります。
このようなニーズに応えBIMと建築設計市場のさらなる発展のため、ゼンリンは地図データの質、機能改善にいっそう力を注いでまいります。
【関連記事】リアリティあふれる3D都市モデルデータがBIMにもたらした革新
当社が携わらせていただいた実際のプロジェクトをご紹介
使いやすいインターフェースと、高速かつ安定性の高い計算ソルバーで、建築関係者から高い支持を得てきたFlowDesigner。2016年からは、ゼンリンの3D都市モデルデータを採用し、都市空間を広域で捉えたシミュレーションがより手軽にできるようになった。なぜ、3D都市モデルデータを採用したのか。その経緯と使い勝手をアドバンスドナレッジ研究所の黒岩氏に聞いた。
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