全庁における地図情報の共有が、災害時の迅速な対応に直結

簡単に、迅速に、同一組織内で地図情報を共有できるGIS製品「ゼンリン住宅地図 LGWAN」。
質の高い災害対応や通常業務の効率化を目指し、このシステムを導入した広島県府中市役所ではどのようなメリットが生まれているのか。
システム導入を検討、指揮した府中市役所総務部情報政策室の桒田貴之氏に話を聞いた。

「ゼンリン住宅地図 LGWAN」導入のポイント

導入前の課題

紙やディスク型など多様な地図が各部署で使用されていた

緊急時の道路情報共有などに問題を抱えていた

地図資料が各種存在していたため、情報の継承が円滑ではなかった

選定理由

システム全体の扱いやすさ

無駄が省かれた機能性

導入におけるコスト面

導入後のメリット

災害時の迅速かつ的確な対応に

部署を超えた情報共有体制が構築できた

地図に関わるあらゆる業務の効率化が進んだ

将来的なテレワークの土台づくりにつながった

導入の前提にあったのは、「市民の命を守る」という命題

まずは、広島県府中市がどのような地域なのか、その特徴を教えていただけますか?

広島県府中市役所

かつては人口5万人を超えていた時期もありましたが、現在(2019年8月1日時点)では約3万9000人と、過疎が進む地方都市です。地理としては山に囲まれていることもあり、豪雨の際には川の氾濫が脅威となり、被害を受けやすい場所です。
平成30年夏の豪雨では甚大な被害が出たのも事実で、市民の防災に対する意識、市役所に対する期待も非常に高まっている状況です。

平成30年の豪雨災害の後、庁内で体制や方針の変更はありましたか?

あらためて「市民の命を守る」ということが、府中市として最も重視すべき施策であるという認識を庁内全体で共有しました。
これまでは産業振興を重視した施策や、高齢化社会に向けた施策を最重要と位置づけてきましたが、豪雨災害によって私たちの考えは大きく変わりました。
その結果、危機管理室と情報政策室というセクションをあらたに設置し、防災対策や災害時の情報共有、市民への対応に万全を期する方向で体制の変更を行ったのです。

災害対応に関する様々な変更が庁内であったということですが、最も大きな変更は何だったのでしょう?

ひとたび災害が起こると、庁内では職員が文字通り走り回りながら対応に追われるのが常でした。しかもそれぞれがいろいろな情報の詰まった「紙」を持って、です。
危険の迫っている家屋や河川、寸断された道路や避難場所などの情報と地図を基準に、私たちの全ての行動が決まっていくからです。
そこで、庁内が急いで取り組むべきはICT化だとあらためて認識しました。
それに庁内の職員は減る傾向にあって、今後、ますます、一人が行うべき業務の種類が増えてくると予想されます。こうした観点からもICT化をいち早く徹底する必要があるだろうということで、「ゼンリン住宅地図 LGWAN」を導入するに至りました。

「ゼンリン住宅地図 LGWAN」導入で、「地図」の価値が全庁共通のリソースに

庁内を円滑に結びつけるICT化の実現において、ポイントとなったのは何でしょう?その上で「ゼンリン住宅地図 LGWAN」が選ばれたのは具体的にどのような理由からでしょうか?

ITリテラシーの向上にも繋がり、誰でも簡単に情報共有できるかどうかが、最大のポイントでした。
どれだけ優れたシステムでも一部の職員しか使いこなせないようでは意味がありません。
さまざまなシステムの導入を検討した上で、職員全員が無理なく情報共有できるだろうと感じたのが「ゼンリン住宅地図 LGWAN」でした。使える機能も絞られていて無駄がないと感じたのも、このシステムを選んだ理由です。とりわけ災害時には一刻一秒を争います。使いたい機能がシンプルに使える、ということが何より重要なのです。
また、通常業務で職員が使用していたのもゼンリンさんの地図だったので、電子化されているとはいえ私たちにとっては使い慣れた地図である、という点が導入においてスムーズだと予想できました。
その上、コスト的にもリーズナブルだと感じたのでこのシステムを採り入れる際、迷いはありませんでしたね。

「ゼンリン住宅地図 LGWAN」を導入する以前の庁内では、各部署の職員の方々がどのような目的で、どのような地図を利用していたのでしょう?

広島県府中市総務部 情報政策室 室長 桒田貴之氏

市内にはゴミステーションが1,000箇所以上ありますし、選挙の際には掲示板を250箇所以上に設置しなければなりません。
近年では空き家も増え、こうした家屋を一軒一軒調べたり、ガードレールやカーブミラーの位置を確認したり、といった業務も行っています。
そしてこうした情報や記録はすべて、各部署の地図に記されていました。しかもディスク型の地図を使っている部署、紙の地図帳を使っている部署、オンラインの地図アプリを使っている部署など、地図の種類は様々。
当然、部署間で地図上の情報を共有するのは困難だったのです。

庁内で地図が共有されていないと、災害時においてどのような問題が生じるのでしょうか?

災害発生から2~3日の間は、どの場所が危ないという情報を集約するのが優先事項となります。
でもそれ以降は、どの道路が使えるかという事実を把握し、市内や市外からの問い合わせに対して正確に応えていくことが主な仕事となっていきます。ところが道路が寸断されているとか、復旧したという情報は土木セクションが掴んでいるので、他部署の職員は逐一土木セクションへ確認しにいかなければなりませんでした。
また、職員のなかには市外在住でまだ府中市の土地勘が養われていない若い人たちも多くおり、たった今倒壊した家屋や緊急に対応すべき市民の方の位置を、急いで紙の地図へ点として落としていく作業は、周りのベテラン職員の手を借りるなどして対応に当たっておりました。

時間や場所を超える、新しい地図の利活用が可能に

「ゼンリン住宅地図 LGWAN」を導入して改善された点、今後、改善されるであろう点について教えてください。

災害時のように緊急の場合でも、全ての職員が時間差なく最新の情報を入手できる点は最大のメリットです。
通常業務においても紙の地図を探して、コピーし、切って貼って、マーキングするという手間が省け、全職員の業務効率は確実に向上しました。
また、このエリアの道路は何年前に修復工事を行ったから次にいつ工事が必要かという判断は、技術者の長年の経験に委ねられていた部分も少なくありませんでした。
加えて人事異動も多く、それまで蓄積した情報がうまく引き継げず、基本的には壊れた箇所に対して修復を入れていくという対応しかできないケースも多々ありました。
でも、詳細な工事のデータが地図に残され、それがLGWANでいつでも誰でも確認できれば、ベテラン技術者でなくても問題が起きる前の修復を的確に行えます。
このように、地図にどんどん情報が蓄積されていくことで、市内で今、起きていることやこれから起きそうなことが各部署で理解、あるいは予見できるかもしれないと私は考えているのです。
また、リモートデスクトップを利用すれば、外出先においても職員が地図情報を常に共有できます。
ですから「ゼンリン住宅地図 LGWAN」の導入で、テレワーク、モバイルワークの実現に向けても非常に有効な土台が築けたと自負しているのです。
これまで庁内で集めた情報が、時間や場所を超えていつでも利用できるといった感覚ですね。
 
 

今回、「ゼンリン住宅地図 LGWAN」の導入に尽力いただいた情報政策室のお二人。
桒田氏はこれまでも防災関連業務に従事した経験を持ち、かねてから庁内で使用する地図のICT化を前向きに検討していたという。
堀江氏は、桒田氏とともにこの春から情報政策室に勤務。
庁内のRPA推進、5Gを見据えた情報基盤整備などに尽力する。

広島県府中市総務部
情報政策室 室長
桒田貴之氏

広島県府中市総務部
情報政策室 主任主事
堀江将人氏

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