未来の自動運転に寄与する、3D地図データを使ったソリューション提案

自動運転や先進運転支援システム(※1)において、ゼンリンの3D地図データが活用されています。これらの開発では、現実に近い道路環境で正常に動作するかを確認するシミュレーションテストが必要となります。株式会社バーチャルメカニクス様(以下、バーチャルメカニクス様)と株式会社理経様(以下、理経様)は、自動車メーカーに対して3D地図データを活用したシミュレーションテストのソリューションを提案しています。

※1 先進運転支援システム:事故などの可能性を事前に検知し回避するなど、ドライバーを補助するシステム。ADAS(Advanced Driver Assistance System)とも呼ばれる。

課題

シミュレーションに適した高精度な道路データ

ご提案内容

カーナビ用に作られた豊富な道路データとそのリアリティ
加工や調整のしやすいテクスチャの仕様

導入効果

低コストで、作業時間も3分の1以下に削減
リアルかつ細かな走行テストの解析が可能に

導入企業様

株式会社バーチャルメカニクス様

所在地:【本社】愛知県名古屋市 【東京オフィス】東京都港区
創立日:2015年4月1日(創業:1999年4月14日)
資本金:1000万円
主な事業内容:車両運動シミュレーションツールの企画、開発、輸入、販売・サポート/車両運動シミュレーション利用技術のコンサルティング

株式会社理経様

所在地:東京都新宿区
設立:1957年6月8日
資本金:34億2,691万円(2018年3月末日現在)
従業員数:単体 145名(2018年3月期)
主な事業内容:システムソリューション、ネットワークソリューション、電子部品及び機器

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【関連リンク】(株)理経様ホームページ内に当社の事例をご紹介いただきました

[課題]自動運転のテストに必要な、リアルな道路情報と街並みのデータ

自動運転や先進運転支援システムの開発は急速に進んでおり、2020年頃には実用化されるとも言われています。

これらを開発する上では、実際の道路で正常に作動するかどうかテストが必要です。しかし、まだ過渡期の技術であるため、実車を使って行うには事故などの危険が伴います。その前段階として、なるべく現実に近いVR(※2)空間でシミュレーションを行うニーズがあります。

バーチャルメカニクス様は、車両運動シミュレーションソフト「CarSim」の販売・コンサルティングを行う企業。CarSimは、開発中の車両の走行シミュレーションを行い、車の制御を行った際の車の揺れやブレーキのかかり方などを解析するもの。道路のモデルを製作することで、車の運動はシミュレーションできるのですが、自動運転のテストに必要な実際の街並みや道路標識をリアルに再現する機能は有していませんでした。

そこで、避難体験のVRソフトなどを作っていた理経様と協力し、実在の街や道路を開発車で走行するシミュレーションソフトを製作します。

ただし、実際の道路や街の3Dデータをゼロから作ることは工数が膨大に。対して、無料で公開されている地図や航空写真は、座標や位置に細かな誤差が生じることがわかりました。また、高精度なものは導入費用が高くテストに適しません。その中で、高精度かつコストも抑えられるゼンリンの3D地図データに着目されました。

※2

VR:バーチャルリアリティ。「仮想現実」の意味

[ご提案内容]加工や調整のしやすさ、座標の精度、低コストが導入の決め手に

3D地図データは、もともとカーナビゲーションでの使用を目的に整備されたため、道路の白線や標識、信号、道路から見える建物などが細部まで反映されています。そこで、このデータをベースにシミュレーションソフトを製作することを提案しました。

仮に道路情報や街並みをゼロから製作する場合は、360度撮影可能なカメラを使い、車で走行しながらデータを収集することになります。ただし、その映像データも2次元であるため、3Dに作り直さなければなりません。3D地図データを活用すれば、これらの作業が大幅に短縮されます。また、座標の精度が高く、シミュレーション画面を製作した際のズレが最小限に抑えられることも確認。これらが決め手となり、導入に至りました。

本事例では、取り込んだ3D地図データをそのまま使うのではなく、理経様がより洗練された映像にし、道路環境なども細かく整備しました。この作業において3D地図データは、建物や標識といった一つ一つのテクスチャ(画像の要素)が分解されているため、個別に位置や色を変える作業がしやすいというメリットがあります。他の地図データはすべてのテクスチャがつながっていることも多く、そこに課題を感じたようです。

これらの点が考慮され、東京都内・特定エリアの3D地図データをご購入いただきました。

[導入効果]作業時間は3分の1。なおかつ、より高いクオリティを実現

なるべく実際の環境に近づけるため、場所によっては地図データを理経様で再構築しましたが、半分以上は3D地図データをそのまま使っているとのこと。映像の質が大幅に上がっただけでなく、作業時間も3分の1ほどに短縮されたといいます。また、高精度な他の地図データ使用と比較しても、コスト面の削減にも成功しています。

さらに映像の質が上がることで、解析のクオリティについても向上しているとのこと。自動運転などの開発において、有効な手立てになり得るようです。今後さらにクオリティや精度を上げられる余地もあり、さらなる発展も見込めそうです。

[活用例]車だけでなく、防災シミュレーションへの可能性も

避難体験VR~火災避難編~

避難体験VR~土砂災害編~

車を使わずに自動運転のシミュレーションをリアルにできると、自動車メーカー以外のIT企業や新規参入企業なども積極的に開発を進められるようになります。3D地図データを使ったドライビングシミュレーションが普及することで、モビリティ業界全般の進展や交通課題の解決につながるかもしれません。

また、理経様が手がけている防災分野のVRにも3D地図データは有効。広範囲のデータを有しているため、土砂崩れや水害(津波、河川氾濫、洪水)といった大規模災害のシミュレーションを作りやすいと考えられます。リアルな避難訓練ツールとしての活用例も出てくるかもしれません。

今後も、技術の発展や人々の安全のために、さまざまな分野で3D地図データの活用を提案していきます。

導入事例リーフレットダウンロード

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当社が携わらせていただいた実際のプロジェクトをご紹介

自動運転の開発に使われる、VRを使った車両シミュレーションソフト。その開発に携わった株式会社バーチャルメカニクスと株式会社理経の方に、プロジェクトの詳細と、この開発が未来にもたらす意義を聞いた。

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