急速に進む自動運転。求められる実用化への準備

未来の技術として、最近よく語られる「自動運転」。その技術の向上はめざましく、自動車業界を中心として実用化に向けさまざまなテストが行われている。そのテストのひとつが、VR(※1)空間を使った自動運転のシミュレーション。株式会社バーチャルメカニクス(以下、バーチャルメカニクス)と株式会社理経(以下、理経)は、そのシミュレーションソフトを開発。両社の先進的な取り組みをここで紹介する。

内容についてお話しいただいたのは、プロジェクトに携わった3名。VR空間での自動運転シミュレーションとはどんなものなのか、その詳細に迫った。

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VR:バーチャルリアリティ。「仮想現実」の意味

株式会社理経 新規事業推進室 XRソリューショングループ シニアエンジニア ジャホン・クシノブ 氏
株式会社理経 新規事業推進室 XRソリューショングループ 担当グループ長 田村貴紀 氏
株式会社バーチャルメカニクス VehicleSim事業部 営業部 部長 友安恭介 氏

現実に限りなく近い環境で、自動運転のテストを行うために

私たちの移動をになう車は、市場へ出るまでに膨大な数のテストが重ねられていく。調べる項目も、各パーツの動きから車全体の挙動までさまざま。これらは、実車を走らせて行うものもあるが、その前段として、コンピューター上でチェックするシミュレーションテストも繰り返し実施される。

バーチャルメカニクスは、そのシミュレーションテストを20年以上サポートしてきた。「CarSim(※2)」という車両運動シミュレーションソフトの販売を手がけつつ、コンサルティングにも関わってきたという。

※2

CarSim:カーシム。開発中の車両について、車の制御を行った際の車体の揺れやブレーキのかかり方などを解析する車両運動シミュレーションソフト。その結果をもとに、車両の機能やバランスを修正していく。

「実車を走らせてテストをするのは、時間や費用、場所などのハードルがあります。加えて、道路や気候条件は変わりやすく、結果の違いが車によるものか環境によるものか判断しにくいという課題も。一方、コンピューター上ではつねに一定条件でテストできるため、現在ではソフトで解析する方法が広く普及しています」(友安氏)

シミュレーションテストは、近年開発が進む自動運転でも用いられようとしている。たとえば自動運転は、道路の白線や周囲の車両との距離感をセンサーが感知し、自動で補正することが求められる。ただし、実際の車でこれらを正常に行えるかテストすることは、事故の危険や規制の壁がある。そこで、自動運転用シミュレーションソフトの開発ニーズが高まってきた。

「CarSimは仮想の道路で車の挙動を見るものでしたが、自動運転のテストでは、現実に近い道路や標識、道路周りの景色が必要。それをセンサーがきちんと感知するか確認する必要があります。道路の白線も、実際ははっきり見えるものばかりではなく、雨天時に道路の陰影で見えにくかったり、通常時でもかすれていたりします。それらを再現する必要がありました」(友安氏)

路面の濡れや反射までも再現。VR空間に実在の道路を

自動運転のシミュレーションには、現実に近い道路や景色をコンピューター上に作り、その中でCarSimのテストをする必要がある。そこで、実際の道路や街並みをVRで再現したのが理経だった。

「弊社では3年前に新規事業推進室を立ち上げ、VR事業を開始。そこで開発した防災訓練シミュレーションが評価をいただき、以降もVR開発のノウハウを培ってきました。そして今回お話をいただき、このプロジェクトが始まりました」(田村氏)

理経は、東京都内のエリアにおける道路と景色を再現。ベースにはゼンリンの3D地図データを活用し、リアルな道路環境の中で自動運転のシミュレーションテストを可能にした。

「我々がバーチャル空間を開発する際には、Epic Games社のUnreal Engine 4(※3)というソフトウェアを利用しています。同製品を使うことで雨や曇りといった天気の変化はもちろん、路面の濡れや日差しの反射まで、細かく条件を変えてシミュレーションできます。道路から見える建物についても、メートル単位で精緻に見え方を再現。また、実際の車が強くブレーキを踏むと、車両の前方が沈み、カメラやセンサーの視界も下に移動します。その際にカメラが捉える映像も視線と同じ動きになるように。そこまでリアリティを追求して製作しました」(ジャホン氏)

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Unreal Engine 4:VRのゲームなどを製作する際に用いられるソフトウェア。世界中で使われている。

精度を上げ、より現実に近い道路をつくっていく

自動運転は「まだ先の技術」というイメージも強いが、自動車業界を筆頭に開発は急速に進んでいる。2020年頃には実用化されるとも言われており、今回開発したシミュレーションソフトが秘める可能性は大きい。

「自動運転は、都市化や高齢化での道路混雑や危険運転といった社会課題を解決する手段として期待されています。そこにはAI(人工知能)が活用されるため、自動車業界だけでなくIT業界などでも研究対象となっていました。とはいえ、自動車メーカー以外の企業は、車そのものをつくっていないためにテストが難しかった。しかし、このようなシミュレーションソフトが発展すると、車をつくっていない企業でも容易にテストできるようになります。それは、自動運転の技術進化のため、ひいては社会課題解決のためにきわめて大きいのではないでしょうか」(友安氏)

また、ソフトそのものについても、より使いやすいものを目指して引き続き改善していくという。

「このシミュレーションソフトでどこまでいけるか、バージョンアップしながら精度を上げていきたいと思います。具体的には、自動運転のシミュレーションを2台同時に同じ道路上で行えるなど。まだまだ機能性を高められるはずです」(田村氏)

お客様や社会のために、今後もお互いの道を極める

車両運動シミュレーションとVR。それぞれの分野に長ける両社が協力したこのプロジェクトは、バーチャルメカニクスにとって“ソフト”という成果物以外にも大きな意義があったようだ。

「弊社は、車両運動のプロとしてその道を極めていきたいと思っています。とはいえ、車を取り巻く環境は今後大きく変わる可能性があり、別分野の力が必要になるでしょう。そこは理経様をはじめ、その道のプロとパートナーシップを組んで、お客様に満足していただけることが理想。今回のプロジェクトは、そういったビジネスモデルの構築としても意義がありました」(友安氏)

一方の理経は、今回のノウハウも活用し、今後もVR事業に力を入れていく。

「VRはリアルな体験ができるからこそ、さまざまな気づきや学びにつながります。今後もVRを介して、人が学びや気づきを得られるものを提供していきたいですね。それにより、社会に寄与できたらうれしいです」(田村氏)

お互いの持つ技術がつながり、形になった今回の取り組み。両社の技術を結集したシミュレーションソフトは、自動運転の発展を後押しするものになるはずだ。

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