経営ビジョン

当社は、「知・時空間情報の創造により人びとの生活に貢献します」という企業理念のもと、当社の事業基盤である地図データベース技術の進化と保有する情報の活用により顧客のDXを推進し、社会的価値創出を目指しています。

当社グループを取り巻く環境は、AI・ビッグデータ・5G・CASE・クラウドサービスなどの技術進展により目まぐるしく変化しています。位置情報関連サービスのニーズも、高度化・多様化しながら拡大し続けており、社会課題の解決においてもその重要性が増しています。一方で、ヒト・モノ・コトが複雑に繋がるネットワーク社会の発展に伴い、世の中には数多くの情報が流通し、必要な情報を正しく素早く手に入れることがますます難しくなっています。このような環境の中、当社グループのコアコンピタンスである情報収集力とデータ整備技術により、位置情報を価値ある社会インフラとして整備し、容易に利活用できる環境を提供することで、顧客のDXを推進し、ビジネス課題や社会課題の解決に貢献するとともに、顧客価値の継続的向上に取り組むことが、当社グループのミッションであり、社会からも期待されている役割だと認識しています。

社会インフラとしての時空間情報の創造と活用によるDXで、ビジネス支援、社会課題の解決に貢献

将来的には現実世界のあらゆる情報をリアルタイムで収集し、現実世界を仮想空間に再現する「デジタルツイン」の実現 など、変化する社会の要求に迅速に対応し、企業価値向上とサステナブルな社会の実現に貢献する事業基盤及び市場環境の変化に対応した新たなビジネスモデルの構築を目指しています。

DX戦略

中長期経営計画

当社は保有する地図関連データベースを活用することで顧客のDXを支援し、社会・企業課題を解決することを事業の柱としているため、DX戦略は当社の事業戦略そのものと捉えており、経営ビジョンを具現化し、ミッションを実行するための「中長期経営計画「ZENRIN GROWTH PLAN 2025(以下、ZGP25)」(2020年3月期~2025年3月期)」を策定しています。
ZGP25では『ネットワーク社会における「量と質」の最適化』を基本方針とし、世の中に流通する膨大な情報を人々の多様化するニーズに合わせて適時に提供(=当社の介入により情報を最適化)することによる顧客価値向上に取り組んでいます。

また、この取り組みを価値創造のプロセスの中で継続的に実行し、ZGP25の目標を達成するために、DX推進を軸として、特に以下の事項を戦略として強化しています。

  • 事業基盤「ZENRIN Information Platform(ZIP)」の継続的進化
  • DXによる社内業務改革
  • 上記をスピードをもって実現するための経営基盤である人財開発と組織構築

ビジネスとしてのDX戦略

ZGP25ではビジネスを5つの事業区分に分け、それぞれの方針・戦略を策定しています。全ての事業において、事業基盤であるZIPを活用して顧客のDXを推進し、顧客価値の最大化に取り組んでいます。

顧客のビジネス基盤または業務フローをデジタル化することにより企業のDX化の第一歩を支援し、ストック型ビジネスの拡大で安定収益基盤を構築

自治体業務基盤のデジタル化、さらに業務効率化や市民サービスの高度化を支援するソリューションビジネスを開発・提供

地図情報技術の活用により、新たなマーケティング市場を創造

業界DXを支援する位置情報ソリューション企画とアライアンスビジネスの強化

カーナビビジネスの安定と当社の保有するネットワークデータ及び様々なコンテンツを活用したスマートモビリティビジネスの確立

DX戦略の推進

組織づくり

当社は保有する地図関連データベースを活用することで顧客のDXを支援し、社会・企業課題を解決することを事業の柱としているため、全社戦略に基づいた各部門の活動方針がDX推進そのものとなっています。事業・生産・機能の各分野におけるDX推進のスピードアップを図るため、専門組織は設置していませんが、担当の各部署が必要に応じて部門横断または協業先企業とのプロジェクトを設置、もしくは連携しながら業務を推進しています。これら業務・プロジェクトの方針・施策実行については、本部長・室長で全社課題を協議する全社戦略会議、常勤取締役で構成される経営会議において、全社的な戦略を統括(進捗確認、評価等)し、取締役会に報告・上程する仕組みとしています。また、DX推進体制については実効性とスピード、事業推進の最適化を図るため、全社組織は適宜見直しています。

株式会社ゼンリンのDX推進体制図

デジタル人財の育成・確保

当社は、外部環境の変化に常に対応できる人材を継続的に輩出するため、人財開発に取り組んでいます。また、人財の確保については、多様な人財獲得に向けた柔軟な採用方式をとっています。

人財の育成

  • 人財育成施策として、新たな教育・成長支援制度を導入(2019年4月~)。同制度は、「階層別研修(若手向け/マネジメント層向け)」、「選択型テーマ別研修」、「選抜型研修(経営幹部候補育成プログラム)」の3本柱で構成
  • 「選択型テーマ別研修」では、全社員を対象に社内講座及び200以上の通信教育・外部講座を準備し、そのうちIT/DX関連に特化した講座を約70講座設定。プログラミング等の社内講座も開催
  • 推奨資格約200のうち、情報処理/IT関連の資格を約100設定し、資格取得者には奨励金を支給するなど、IT関連のスキル向上及びリスキリングを支援
  • 上記研修やOJTに加え、当該事業を運営している企業・団体への人材派遣(出向)を通じてDXに関連する技術を習得後、当該人財を主要ポストに配置し、プロジェクトリーダーとしてスキルを発揮できる人事施策を実施

人財の確保

  • 保有する地図データベースの新規設計・維持管理、提供するサービスの開発に携わる技術系人材やIT商材に対応できる営業人財などは新卒だけでなく、外部からの人財招聘(リファラル採用・アルムナイ採用含む)等も実施
  • 技術系人財に特化して、情報工学専攻の大学(院)や高等専門学校出身者など、ダイレクトリクルーティングや長期インターンシップ、大学・高等専門学校とのコネクションを活用した採用も推進
  • 2023年4月および2024年4月には初任給引き上げを実施。特に獲得競争が激化している研究開発・開発部門の技術系大学院卒の初任給引き上げ率を高く設定

外部との連携

位置情報イノベーションを加速させるため、他者との積極的連携による体制強化や、最新の位置情報関連技術の協働研究などにも取り組んでいます。
2020年4月には、本社(北九州市)・東京本社及びグループ会社の研究開発拠点に加え、当社初となる産学官連携の研究・新規事業開発拠点「長崎R&Dブランチ」を開設。さらに、2021年には当社初のコーポレートベンチャーキャピタルを設立し、出資やM&Aなどを通じて、ベンチャー企業の最先端技術や革新的ビジネスモデルと当社グループの経営資源の融合による新たな価値創造を目指しています。

ITシステム

当社のDX戦略を推進するめ、事業基盤である情報プラットフォーム「ZENRIN Information Platform(以下、ZIP)」の構築・拡充に継続的に取り組むとともに、社内業務システムにおけるDXも推進しています。

事業基盤:ZENRIN Information Platform (ZIP)

ZIPはあらゆる手段で収集した地図関連情報をデータベースとして整備し、各商品・サービスの利用用途に応じて編集、提供する一連の仕組みです。現在、データベースのさらなる精度向上の取り組み(※)やAI 等を活用した地図データベース整備の効率化に加え、ZGP25では、ZIPに新たなレイヤーである「流通基盤」を追加し、その拡充を進めています。
「流通基盤」は、APIを介し、当社データベースと顧客システムを直接連携して常時接続の状態(=ストック型サービスへの転換)を実現するとともに、当社保有データと顧客保有データや世の中に流通するオープンデータを組み合わせて提供することも可能にするレイヤーです。この仕組みによりユーザーの多様化するニーズに、より柔軟に対応することができるようになります。そのためのクラウド型パッケージサービスや、APIで提供する機能開発にも注力しています。

※2020年の日本電信電話株式会社(以下、NTT)との資本業務提携により、現在NTTグループとデータベースの精度向上の取り組みである「高度地理空間情報データベース」の共同構築を進めています。

事業基盤である情報プラットフォームZIP(ZENRIN Information Platform)の図

社内業務DXの取り組み

《調査業務》

●調査手法のデジタル化

全国に約70の調査拠点を保有し、様々な手段でデータベースを構築するための情報を収集しています。そのひとつである徒歩現地調査では、それまでの紙原稿に代えて調査用端末を導入。調査データのデジタル化及びデータ共有が可能となり、各種工程の削減や調査エリア以外の拠点でのデータ処理作業分散化により、コスト削減及びデータ提供リードタイムの短縮を実現しました。

●業務管理

調査用端末に蓄積された情報から、各調査スタッフの調査ルート、調査個所、調査項目別の調査数、調査時間等を可視化し分析可能にするツールを開発。現在試験運用を行っており、データから効率的な調査ルートの策定や調査人員のロードバランスなど、さらなる調査業務の生産性向上に取り組んでいきます。

《データベース整備業務》

●整備工程の自動化

収集した情報をデータベースとして整備していく工程では、特に自動運転用の高精度地図データなど、膨大な情報を処理する必要があるため、車両計測で取得した道路画像から、AIの画像認識技術を活用して標識などの整備対象を自動認識するなど、様々な処理工程の自動化を図る技術開発と導入に注力しています。

●業務管理

案件毎や組織別など多様な角度から整備進捗を可視化し、勤怠システムとも連携する管理システムを導入。リアルタイムで各整備担当者の更新データ数、各整備アプリの利用頻度、整備時間、整備数の推移、生産性の推移などを可視化するツールも開発し、人員の適正配置や、アプリの利用頻度などから作業のボトルネック個所を抽出・分析可能とすることで生産工程の改善計画を策定する取り組みなどを推進しています。

社内業務システム:ゼンリンDX基盤システム

社内に蓄積した各種情報を一元管理し、迅速な経営判断と業務改善及び新ビジネス創造に貢献するための新たな社内システム「ゼンリンDX基盤システム」の構築にも取り組んでいます。
売上・顧客情報/生産管理・原価/会計・勤怠等のデータを保有する各社内業務システム(事業系・生産系・機能系・ERP)の一層の連携を図り、より効率的でタイムリーな情報の可視化とデータ分析を可能とするシステムを目指しています。
このシステムに集約されたデータをAI技術やBIツールで可視化・分析することで、経営指標のリアルタイムでの可視化、有効な営業ターゲットリストの自動作成や効果的なアプローチ手法の立案、データベース更新や商品提供サイクルの見直し、生産工程の改善と人員配置の最適化、働き方改革の計画策定などに活用していきます。
2025年から、順次機能をリリースする予定です。

ゼンリンDXサービス基盤システム図

一方で、非競争領域である一般的な業務システムについては、グループウェアや会計管理パッケージなどの導入により業務効率化とコスト低減を図っており、DX推進に不可欠な社内業務標準化を目的とする専門組織(事務業務推進部)も設置、業務標準化とデジタル化の両面で改革を加速しています。

投資計画・実績等

事業基盤強化のため、適切な投資計画及び実行を行っています。

  • ZIP の開発などソフトウェア開発投資を中心に、設備投資は年間50~60億円レベル、研究開発費は年間10億円レベルを継続
  • データベース精度向上の取り組みに向けた2020年のNTT社との資本業務提携では、自己株式420万株の第三者割当を実施、現在も取り組みを継続中
  • 2021年1月にはCVC1号ファンド、2023年4月にはCVC2号ファンドを設立(ファンド総額:2024年4月現在50億円)。 ※直近のM&A事例:3D点群データのITソリューション開発・販売を行うローカスブルー㈱の子会社化)

DX戦略成果指標

当社は、社内DXの推進により地図データベースを中核とした事業基盤を構築し、その事業基盤を活用することで顧客のDXを支援し、社会・企業課題を解決することを事業の柱としています。そのため、DX戦略は当社のビジネス戦略そのものであり、その達成度を測る指標は、業績目標値として、中長期経営計画で策定・公表しています。
その他、個々のDX戦略に対する成果目標も設定しています。

戦略 主な成果指標

中長期経営計画

中長期経営計画の業績目標値
(売上高・営業利益・営業利益率・ROE、各事業別の売上高)

事業基盤ZIPの強化

・流通基盤を活用したAPIサービス売上高
・流通基盤を活用したストック型サービスの売上高・売上比率
・流通基盤を活用したストック型サービスの新商品開発件数

社内業務DX

・データベース整備業務における生産性向上率(生産量)、データ提供リードタイム
・2025年よりゼンリンDX基盤システムを活用した社内情報提供サービスの開始

業績評価および戦略・目標の見直しは毎年度実施し、業績目標値は、期末決算時に次年度の目標を公表(更新)しています。評価は、四半期毎に取締役会に報告するとともに、戦略や目標値(KPI)の進捗・見直しに関しては、常勤取締役で構成される経営会議で審議し、取締役会で報告・承認を行っています。

サイバーセキュリティ

当社は、情報セキュリティに関する基本方針を定め、その方針に則って、社内管理体制の構築、社員教育の実施、システム対策の整備等を行うとともに、法令や社会環境の変化に応じて情報セキュリティの仕組みを都度見直し、継続的な改善に努めています。また、定期的なセキュリティ監査も行っています。

外部機関による監査