BIMの中核に3D地図データを据え
高度なシミュレーションと工数の削減を両立
新たな知見創出に注力

三菱地所設計様は、最先端の技術によってBIM(Building Information Modeling:ビルディング インフォメーション モデリング)の可能性を追求するR&D活動において、「3D地図データ」を活用されています。「3D地図データ」の正確な周辺環境情報は、研究開発の在り方をどう変えたのか。導入の経緯から現在の状況、そして今後の活用方針についてお聞きしました。

課題

周辺環境モデルの作成に
時間とリソースが割かれ、
精度も不十分だった

ご提案内容

建物から道路まで
精緻な3D地図データで再現する
モデル環境を提案

導入効果

建物と街並みの正確な3D地図データが
手軽にそろうようになり
本来の設計と研究開発活動に注力

導入企業様

株式会社三菱地所設計

株式会社三菱地所設計様

本社:東京都千代田区丸の内2-5-1
創業:明治23 年9月 設立:平成13年3月
資本金:3億円
従業員数:714人(2020年4月現在)
事業内容: 建築および土木関連の設計・監理、リノベーション業務、都市・地域開発関連業務、各種コンサルティング業務

【関連記事】3D地図データを活用しBIMの可能性を追求する、三菱地所設計が切り開く建設の未来

はじめに

1890年、三菱社が設置した「丸の内建築所」を祖とする三菱地所設計様。日本最古の設計事務所として、130年にわたり日本はもとより世界各地で建築や街づくりの陣頭に立たれてきました。同社は常に都市的な視点をもってプロジェクトに携わり、最先端の技術を取り込む研究開発にも積極的で「テクノロジーと生活を結び、豊かな空間づくりを実現する」ことを標榜し、新しい技術の創出に取り組まれています。
そんなR&D活動においてBIM(Building Information Modeling:ビルディング インフォメーション モデリング)は欠くことのできないプラットフォームとなっており、そのベースレイヤーとも言うべき敷地や都市のモデリング情報に、「3D地図データ」を活用されています。

[課題] 設計の現場に多大な負担を強いていたモデリングデータの作成、精度にも課題が

建物の設計では、建物内部への風や光の取り込み方が重要なポイントの一つです。自然換気や採光は省エネルギー性に加えて快適性を高める重要な要件で、竣工時にどのように風が吹き抜け、光が差し込むのかを考慮した設計が求められています。
風の流れを読み解くのに、三菱地所設計様では流体シミュレーションソフトを活用されています。都市の3Dモデルをコンピュータ上に再現し、街路を抜けた風が建物のどこに当たって、どのように建物の中を流れていくかを、風向、風速を変えてシミュレーション。窓や吹き抜けのサイズ、位置を変化させて、最適解を探求します。
従来、計画敷地の周辺環境は、主に意匠設計担当者が描き起こしていました。その方法は地図に記載されている敷地形状やその地点の標高、建物の高さをもとに、数値や形状を入力していくといったものでした。地図から読み取れる情報だけでは判然としない高架道路の形状などは、現地に出向いて目で見て確認し、大体の形を描き加えていく。非常に多くの工数がかかる作業でした。
加えて、手作業であるがゆえにミスも起こり得ます。こうして追記したモデルは、それ自体が推測の域を出ず、そのため流体シミュレーションの結果にも万全の信頼を置けないという状況になっていました。

[ご提案内容]街並みを精緻に再現した、3D地図データによる正確なシミュレーション環境を提案

東京駅周辺の気流解析イメージ

東京駅周辺の気流解析イメージ
[熱流体解析ソフトウェア「FlowDesigner」(株式会社アドバンスドナレッジ研究所)を使用]以下同じ

そこで、流体シミュレーションソフトを開発する株式会社アドバンスドナレッジ研究所様を介して当社にご相談いただいた際に、ご提案したのが「3D地図データ」です。日本全国の最新データに加え、都市部に関しては詳細なデータも整備しており、モデル作成の工数と時間を大幅に削減できることをご提案しました。「3D地図データ」には各建物の階数情報が整備されており、高さに反映されます。また、目視による作成ではどうしても細部の作り込みを欠いていた立体交差なども精緻に再現されており、その点でも正確な流体シミュレーションが期待できました。

[導入効果]新たに得られた知見を設計に反映、工数削減によってより高度な作業に従事することも可能に

東京駅周辺の気流解析イメージ

東京駅周辺の気流解析イメージ

実際に流体シミュレーションを行ったところ、これまで気付いていなかった現象を発見したといいます。丸の内エリアである方向から風を吹かせたところ、複雑な街区を抜けて超高層ビルを取り巻いた風が、上向きに方向を変えてビルに沿いながら上昇気流を発生させていました。これまで確認できなかったもので、今後建物を設計する際に、構造の強度や安全性、環境性をさらに高める知見として有用性を感じることができたそうです。
その後2019年4月に、「3D地図データオンライン提供サービス」をリリースした際も、いち早く導入を決めていただきました。それまでは必要なスポットの情報を得るために、複数の地図データをダウンロードして結合しなければいけなかったのが、オンライン提供サービス導入後は範囲を自由に指定してダウンロードできるようになり、効率が非常に高まったとご評価いただいています。
その結果、工数の削減はいうまでもなく、より高度な作業に従事することができるようになりました。R&Dのほか、設計の部門からも、データの信頼性に頭を悩ませることがなくなり、新たな知見や設計アイディアを見いだすことに力を注げるようになったとの評価をいただいています。

[活用例]BIMのさらなる高度化へ、モデリングデータをシームレスにつなぐ仕組みの構築を目指す

東京駅周辺の「3D地図データ」と建物情報の活用イメージ

東京駅周辺の「3D地図データ」と建物情報の活用イメージ

加えて、各アプリケーション間で効率的にデータ連携がとれるように整備されてきたことで、同社はこれまでになかった新たな設計の形を展望しています。
それは、BIMで作成したモデリングデータを「3D地図データ」とシームレスにつなぐこと。例えば同社が設計監理を手掛けた場所では、いち早くその建物の情報を反映したデータがそろいます。それが将来「3D地図データ」に自動的に反映されるような仕組みができあがれば、誰もが最新のデータをもとにモデリングできることになり、建設業界全体の一段の活性化、高度化につながります。三菱地所設計様の取り組みは、一社の枠を越えて大きな変化を業界にもたらすことになるかもしれません。同社からのさらなるBIMの高度化への期待に応えるべく、引き続き地図データとしての精度向上を目指して参ります。

[関連記事]3D地図データを活用しBIMの可能性を追求する、三菱地所設計が切り開く建設の未来

当社が携わらせていただいた実際のプロジェクトをご紹介

建設業界では、いまや必須のワークフローとなっているBIM(Building Information Modeling:ビルディング インフォメーション モデリング)。建築物の3次元モデルや情報を活用し、設計から施工、維持管理に至るまで、建築ライフサイクルのすべてにおいて、次々とイノベーションを起こしつつある。このBIMの展開を早くから推し進めてきた三菱地所設計R&D推進部BIM推進室の矢野健太郎氏は、ゼンリンの「3D地図データオンライン提供サービス」がリリースされた当初から、これを基幹となるプラットフォームとして利用している。その背景にある考え方や活用法と、今後の可能性を聞いた。

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