マーケティングの手法はターゲットによって異なります。ECであれば全国のユーザーからターゲットを絞り込めますが、実店舗となるとそうはいきません。そこで重要となるのが、店舗を構える地域の特徴を把握し、販促に活かすエリアマーケティングです。
本記事では、新規出店、商業施設の開発、既存店舗の売上改善に欠かせないエリアマーケティングについて、メリットや具体的な方法、成功のポイントを紹介します。ぜひ参考にしてください。
エリアマーケティングとは?
エリアマーケティングとは、地域の特性に合わせたマーケティング手法です。例えば、高齢者の多い地域に店を出店する際に、高齢者向けの商品を取扱う店舗にすればそれでよいわけではありません。競合の数や世帯収入等によってマーケティング手法が変わってきます。
車での移動が当たり前の地域であれば、駐車場がなければ集客は望めませんし、新聞の購読者が少ない地域であれば、折り込み広告以外の検討が必要になるでしょう。
そこに住む人の属性や趣味嗜好、地域の文化、地形、競合などのデータを分析し、その結果から最適なマーケティング手法を導き出すのが、エリアマーケティングです。
エリアマーケティングのメリット
エリアマーケティングの実施によりさまざまなメリットが得られますが、なかでも大きいのは次の2点です。
適切なマーケティングの実施
自店舗がある地域に住む住人に対し、適切なマーケティングを実施できます。例えば、20代の男性をターゲットとした飲食店でも、社会人が多ければランチを充実させる。学生が多ければ大盛メニューを増やすといった異なるアプローチが可能です。
また、同じ社会人でもブルーカラーが多いのか、ホワイトカラーが多いのかにより、味付け、盛り方も変わってくるでしょう。自店舗の商圏に住む住人に対し、無駄なコストをかけず適切なマーケティングを実施できるのは、エリアマーケティングの大きなメリットです。
既存店舗の売上改善
エリアマーケティングは新規出店以外に既存店舗の売上改善にも高い効果を発揮します。商圏にタワーマンションができて若い家族が増える。自店舗の最寄り駅に別路線から乗り入れが開始され商圏が拡大したなど、地域特性の変化を迅速に把握し、それに合ったマーケティング手法の選択が可能です。
エリアマーケティングの手順・手法
実際にエリアマーケティングを行う際の手順と主な方法について解説します。
STEP1:出店候補地域のリストアップ
まず自店舗を出店する地域の候補をいくつかリストアップします。
STEP2:候補地データの収集
リストアップした出店候補地のデータを収集します。収集する主なデータとしては挙げられるのは次のとおりです。
⮚住民データ
年齢分布・世代構成・昼夜間人口・学生数・高齢者数・収入など
⮚行動データ
住民の行動範囲・週末に出かける場所・情報収集手段・興味関心・食生活など
⮚地形・気候データ
平地が多い・山間部にある・海辺などの地形データと平均気温・降雨量などの気候データ
⮚競合データ
競合店舗は何店舗あるか、サービス内容(飲食店なら席数やメニュー内容など)、駐車場の有無、営業時間、平均価格帯、来店状況など
⮚交通データ
車移動の量、電車やバスなど公共交通機関の発達度、駅周辺や幹線道路の混雑度、人の流れなど
⮚建物データ
建物属性・建物の種類(商業施設か文化施設か個人マンションかなど)また空き家はどれぐらいあるかなど
STEP3:データの取得
データは大きく公的なデータと民間データに分かれます。
住民データについては国勢調査や住民基本台帳などから取得可能です。地形・気候データは国土交通省が提供する国土数値情報、位置参照情報、国土調査(土地分類調査・水調査)などが利用できます。交通データも国土交通省が「全国道路・街路交通情勢調査」として公開していますが、5年に一度しか更新されないため、最新データを得るには民間データが必要です。
建物データも同様で、「住宅・土地統計調査」や「法人土地・建物基本調査」などさまざまな政府統計がありますが、5年ごとの更新となっているものは少なくありません。そのため最新データを得るには民間データの使用をおすすめします。行動データや競合データについては、自社で調べる、もしくは調査会社に依頼することで入手可能です。
STEP4:収集したデータの分析
収集したデータの分析を行います。具体的にはデータを基にした競合との比較。データに加え実際に商圏を歩き、自身の目で見た情報を加味したうえでの集客・売上予測です。自店舗の商圏にどのような人が住み、どのような好みを持っているかを知ることから、一般的にはこれを商圏分析と呼びます。
商圏分析に加え顧客分析、競合分析などの結果から候補地を絞り、出店する地域を決定します。
STEP5:分析結果を基にしたマーケティング手法の立案
分析した結果、出店する地域を決定したら、次に行うのはその地域でのマーケティング手法の立案です。ここではいくつかの具体例を紹介します。
⮚競合対策を主としたマーケティング手法
競合が多い地域に出店する場合、競合との差別化を目的としたマーケティング手法が重要です。例えば、競合の定休日にセールやイベントを実施する。また、競合の顧客が不満に感じている部分を強化する方法も考えられます。例えば、競合の店舗が混雑していて問い合わせ対応が遅い場合は、店員を多くすることやオペレーションセンターを充実させること。駐車場がいつも混雑しているようなら、十分な駐車スペースを確保することや車が出入りしやすい設計を意識することなどが考えられます。
⮚集客を主としたマーケティング手法
新規出店で、集客を主とする場合、商圏に住む人の特性に合わせたチャンネルでの広告宣伝が重要です。例えば車よりも電車での移動が多い地域であれば、車内刷り広告や駅のホームに看板を設置する。逆に車移動が多い地域であれば、道路看板の設置やラジオ広告を活用することなどが考えられます。
⮚売上改善を主としたマーケティング手法
既存店舗の売上改善を主とする場合、競合対策も必要ですが、まずは自店舗の顧客調査が重要です。顧客満足度調査による改善策の実施に加え、商圏内のターゲットで取り逃している層に対し、認知度を高める施策が求められます。
若年層へのアプローチとして、チラシだけでなくスマートフォンアプリといったオンライン広告を併用する。取り逃がしている層の嗜好にあった店舗の誘致もしくは仕入品の変更。車での買い物が多い地域であれば、ドライブスルーを充実させる、などの方法が考えられます。
STEP6:マーケティング施策実施後の効果検証
マーケティング施策実施後、成果のあった施策、成果が出なかった施策など実際の成果を検証し、その結果から新たな仮説を立てて次のマーケティング手法を検討します。既存店舗の場合、このサイクルを繰り返すことで、成果を高めていきます。
エリアマーケティングを成功させるポイント
エリアマーケティングを成功させるにはいくつかのポイントがあります。具体的には次のとおりです。
全体の予算を明確にしたうえで実施する
エリアマーケティングを実施する際、まずは施策にかけられる予算を明確にします。例えば、広告を出すのであれば、いくらまでを広告費として使えるのかをわかっていないとROI(投資利益率)が図れません。その結果、目的の集客は実現したものの、広告費で大きなマイナスになってしまう可能性もあります。
常にマーケティングに使える全体の予算を意識して施策を実行すれば、広告費をはじめとした各施策の限度額もわかり、予算超過を防止することが可能です。
地域の変化を見逃さない
「新しい商業施設ができる」「大学のキャンパスができる」「新たに快速電車が停まるようになる」などの要素により、人の流れは大きく変わります。仮に商業施設ができた場所がエリア外であっても、車移動が中心の地域であれば、人の行動範囲が変わる可能性も少なくないです。常に地域や周辺の変化を意識し、都度、マーケティング手法も変化させていく必要があります。
現地でのコミュニケーションを欠かさない
データだけに頼るのではなく、自身の足で地域の変化を確認し、そこにいる人とのコミュニケーションにより、鮮度の高い需要をつかむことも重要です。例えばデータ上は高齢者の割合が多く、折込みチラシ等のアナログな広告が有効と考えたとしても、実際に街の店舗では電子マネー決済やデジタルの割引クーポンが多く、デジタル広告に慣れ親しんでいるかもしれません。
エリアマーケティングは常に変化する状況を把握し、適切な施策を実行することが重要
エリアマーケティングとは、地域の特性や住民の嗜好、行動データなどを加味したうえで最適なマーケティング手法の立案、実行をするものです。新規出店した際の集客や販促、既存店舗の売上改善には欠かせない施策といえるでしょう。
エリアマーケティングで成果を上げるには、必要なデータの収集や分析が重要です。しかし、それ以上に常に変化する状況をリアルタイムで把握し、その時々で適切な施策の実践が欠かせません。そのためには、継続的な情報収集はもちろん、マーケティング担当者が実際にその地域を歩き、コミュニケーションを行いながら生の情報を集めることも必要です。
また、エリアマーケティングの立案には、最新かつ詳細な地図データが欠かせません。自社で収集したデータを数値で見るだけではなく、実際の地図にマッピングすることで自店舗の立ち位置が明確になり、マーケティング手法の新たなアイデアも浮かびやすくなるでしょう。
弊社では、収集したさまざまなデータを地図上で可視化させ、効果的なエリアマーケティングの立案を実現する建物ポイントデータの提供を行っています。住居・事業所・商業施設の3項目をさらに細分化し、トータル38項目でそれぞれ建物の住所や名称、複合施設の戸数、延床面積など建物にかかわる詳細情報の確認が可能です。ご興味のある際は、お気軽にご相談ください。
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