GISにおける統計データ活用例を解説!商圏分析方法も紹介

地域の性質や傾向を地図上で視覚化できるGIS(地理情報システム)には統計データの活用が有効です。
しかし「統計データとは何なのかよくわからない」「GISと統計データをどう利用したらよいのか知りたい」と疑問に思う方もいるのではないでしょうか。
そこで本記事では、GISと統計データを組み合わせてできることや活用例を解説します。

統計データとGIS

そもそも統計データとは、一定の集団における性質を定量的に示したものです。またGISとは地図の位置情報にさまざまなデータを重ねて情報を見える化するシステムのことで、GISに統計データを活用可能です。統計データをGISに反映して区域ごとの分布を可視化することで、データ単体では見えてこなかった「どこにどれだけの数が点在しているか」「区域ごとの変化」などを把握でき、分析に役立てられます。
多くの統計データがありますが、代表的なものは人口や世帯に関する情報を調査する「国勢調査」、住宅と土地の保有状況・居住世帯に関する情報を調査した「住宅・土地統計調査」などです。なお、統計データは総務省統計局のサイトでダウンロード可能です。
国勢調査では町丁・字別における年齢別の人口データを収集しています。ある地域を正方形で区切り、マス目ごとにデータを地図上に表示させ、高齢者の比率で色を塗り分ければどの地域で過疎化が進んでいるかを見た目で判断できます。高齢者の比率が多い地域を知るだけならデータ単体からでも読み取れますが、GISに取り入れることで、市町村における位置関係や分布を直感的に把握可能です。
つまり、GISと統計データを組み合わせることで、一定の地域を俯瞰的に見られるようになるのです。これにより、データに基づいた街づくりや将来を見据えた都市計画の策定が可能になります。
なお、総務省統計局では「政府統計の総合窓口(e-Stat)」というGIS作成ツールを無料で提供しています。エリア設定、グラフ表示、レポート生成の3つの機能で成り立っており、国勢調査や経済センサスなどの統計データを利用することで、目的に応じた地図を作成可能です。

GISで統計データを使ってできること・活用例

GISで統計データを使用してできることや活用例をさらに詳しく紹介していきます。

境界データ・統計データを利用した統計地図の作成

境界データを利用することで特定の小地域に絞った境界図を作成できます。小地域は町丁・字等別に分かれているので細かく区分けされた地図を作成可能です。区域ごとに紐付く世帯構成や収入を重ねることで情報が可視化された統計地図が完成します。人口統計や事業所統計データを利用し、区域ごとの密度を色別に表示すれば分布が一目で分かります。

地域メッシュ統計データを利用した統計地図の作成

地域メッシュとは、緯度と経度に基づき、地域を格子状の区画に分けて、それぞれの区画の統計データを整理したものです。区画には基準地域メッシュがあり、約1km四方や2分の1地域メッシュ(約500m四方)で編成されています。これにより、小地域よりもより詳細に分布状況を把握できます。地域メッシュは、ほぼ正方形の形状であることから、位置の表示が明確であり、距離に関連した計算や比較がしやすいです。また、異なる統計結果でも同一の条件で分析が可能です。

ニーズに合った地域特性の把握

町丁・字等別に基本的な事項の結果について集計した小地域集計結果であれば、エリアごとに男女・年齢・就業状況を把握できます。用途に合わせたターゲットの絞り込みや店舗の出店計画に利用可能です。
徒歩圏内の顧客にターゲットを絞って出店場所を決めるのであれば、市町村が表示できれば十分でしょう。逆に広い範囲から営業エリアを絞るのであれば都道府県全体が見えるように設定することで、地域にとらわれずエリアを選定できます。

新型コロナウィルス感染症に対する広報活動とワクチン予約補助サービスの実施

ある自治体では、令和2021年4月下旬から感染症の陽性者が増加したため、緊急対策を実施することを決定しました。その際にGISと統計データを活用して効率的な呼びかけとワクチンの予約補助を行いました。
当該自治体では、当初SNSによる外出自粛の呼びかけを行いましたが、課題となったのが、紙媒体を情報源にしている高齢者への周知です。また、ワクチン予約窓口の電話がつながりにくく、予約が取れないとの苦情も相次いでいました。
そこでGISと人口構成データを活用して高齢化率が一定の割合を超える地区を抽出。対象地域に市の保有する広報車を重点的に派遣する広報活動を策定しました。さらにワクチンの未予約者のデータも活用して、予約の進んでいない地域を優先して広報車が回り、予約状況の現状や予約のコツを拡散するようにしたのです。その結果、効率的な呼びかけとワクチン接種予約のサポートが可能になり、予約専用ダイヤルの混雑が解消し、苦情までも減少させることに成功しました。

GISと統計データを活用した商圏分析の方法

商圏分析はその商圏の住民の性別・年齢・従業状況などから、市場規模や地域特性などを分析するものです。商圏分析によって出店の有無を判断したり、最適なマーケティング手法を見つけたりすることができます。ただし有効な分析結果を得るためには、以下のようなデータを可視化して分析する必要があります。

人口

ライフスタイル

競合

地理的情報

マーケティングを実施するエリアや出店場所を決定するには、ターゲットが多く居住しているエリアを抽出する必要があります。そのため、年齢別の人口や世帯構成・収入・居住物件などライフスタイルに関わるデータをマッピングし、分析したいエリアに一定の距離円(バッファ)を発生させて商機があるかを見極めていきます。さらに、ライバルの出店位置データを組み合わせることで、競争の少ない場所を探すことも可能です。また、駅やバス停の位置・主要道路の経路を表示させれば、アクセスのしやすさもチェックできます。
統計データのマッピングに利用するのはメッシュの入った地図です。さらに分析するエリアで抜けがないように円を描いていけば、漏れなく商圏を見極めていけます。
このように、GISで地図上に統計データを表示させ、さらに解析をすることでマーケティングにおいて狙うべき商圏を選定していけます。

統計データをGISで可視化することでできること

統計データをGISで可視化することで、データを羅列しただけではわからなかった傾向や関連性などが一目で把握できます。また、出店候補になっているふたつの場所の人口や商業活動の活性具合を見比べることも可能です。GISには指定したエリア内の統計データを集計する機能があります。比較したい場所を中心にそれぞれ同じ範囲の円を指定し、その中の人口・就業者の産業・昼間の活動人数を集計すれば、顧客の集めやすさを見極められます。
さまざまなオープンデータを組み合わせることで新たな発見が得られることもあります。例えば、以下のデータを組み合わせることで、地域ごとの家庭用ガス・灯油消費量を算出した事例もあります。

環境省データ

市町村コード表

国勢調査データ

気象観測点位置データ

気象観測データ

これらのデータを組み合わせて、さらにシミュレーションすることで可能になるのは、燃料種別の需要量予測です。
ニーズを想定できるようになることで、以下のようなエネルギー関連の関係者が行う意思決定や計画策定に活用されます。

燃料の小売り事業者

送配電事業者

環境対策のシナリオを検討する国や自治体

このように、大量のデータを組み合わせてGISで可視化することで、データに基づいたビジネスの判断や全く異なるデータの算出が可能です。

統計データを利用してデータに基づいたビジネスを展開しよう

総務省統計局の統計データとGISを利用することで、地域ごとの人口や生活スタイルが見えるようになります。そのため、市町村内での傾向や地域差の比較も可能です。また、特定のエリアを指定し、その中のデータを見ることで、目的に応じた分析が可能になります。
「政府統計の総合窓口(e-Stat)」では、ある程度の分析は可能ですが、高度な商圏分析をするには限界があります。さらに詳細なデータ分析をしたい企業の場合は物足りないと感じるでしょう。そのようなときは、各分野に特化した専門データを取得する必要があります。
弊社では、建物一軒一軒の情報を収録した「建物ポイントデータ」を提供しています。営業のターゲット先の選定や効率的な経路の検討に活用可能ですので、ご興味のある方は、ぜひお問い合わせください。

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