主題図とは、特定の目的に応じて必要な情報を表現した地図のことです。情報をわかりやすく伝えるためだけではなく、データ分析やビジネスの戦略策定にも活用されています。しかし、具体的にどのようなデータを表示し、どう活用していけば良いかわからず悩んでいるご担当者の方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、主題図とはそもそもどういったものなのか、用途について詳しく解説していきます。ぜひこの記事を参考に、目的に応じた適切な主題図の作成方法を理解しましょう。
主題図とは
主題図とは特定の利用目的に合わせた情報や数値が詳しく描かれている地図のことです。
一般の地図には、地球表面の形状や尺度が表示され、主にどこに何があるのかが正確に記載されています。それに対し主題図は「どこ」という地図の基本的な情報に加えて、特定のテーマ(主題)に絞ったデータを表示しています。
もともとは国土の開発や保全に利用する目的で作成されることが多かったのですが、今では地方公共団体から民間企業まで幅広く利用されるようになっています。また、テーマに即した情報を視覚的に理解できることから、研究・教育・防災対策などの基礎資料としても利用されており、身近なものだと以下のような用途があります。
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ハザードマップ
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テレビの天気予報図
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人口などの分布図
主題図では位置情報に紐付けられているあらゆるデータを表示可能です。ただし情報は多ければよいわけではなく、目的に応じて取捨選択が必要です。
⮚出典
主題図でわかること・種類とは
主題図には作成者の伝えたい情報が反映されています。具体的には、以下のような5W3Hの要素から必要な情報がピックアップされ、表示されていると考えてください。
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いつ(when)
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どこに(where)
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誰(who)
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何(what)
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なぜ(why)
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どのように(how)
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どのくらい(how much・how many)
単純にデータを記載するだけでなく、データ分析の結果を指し示したり、複数の主題データを重ね合わせたりすることも可能です。つまり「どこに」を基本情報にして、その他のあらゆる情報を視覚化できます。
以下のような種類があることからも、表示可能な情報の豊富さがわかります。
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天気図:国や地域ごとの気圧配置やその動き・等圧線・雨雲の様子
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路線図:電車ごとのルート・始発や終点とその間での停車駅
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土地利用状況を表す図:土地の区分や利用目的
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避難所分布図:災害ごとに適した避難場所の位置
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帰宅困難者の人数を示す図:地域ごとの帰宅困難者
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犯罪・災害の発生状況を表す図:国や地域ごとの犯罪・災害発生数
表示するデータや見せ方は、市場のニーズや作成者が伝えたいことなどの目的に応じて大きく異なってきます。表したいテーマ(主題)があり、それを視覚的に分かりやすく表現することが主題図の目的です。具体的な表現方法については次章で解説します。
⮚出典
主題図で情報を表現する方法
主題図で情報を視覚化してわかりやすく相手に伝えるには、正しい考え方やデータの表現方法を知っておく必要があります。代表的なポイントは以下のとおりです。
主題図で表現したいテーマを決める
まずは主題図で何を表現するのかを定める必要があります。例えば、地域による公共施設の偏りを示したいのであれば、地区ごとの境界線や各施設の位置を表示します。施設が充足しているかを議論するのであれば、人口分布の表示も必要になるでしょう。このように、必要なデータをビックアップしていくには、最初のゴール設定が重要です。
使用する一般図とそのスケールを決める
主題図には、ベースとなる一般図が必要です。目的に合わせて最適なスケールの地図を利用しましょう。
よく利用されるのは、都道府県や市町村の境界線が描かれた白地図や、建物や道路・河川・山などが記載されている一般的な地図です。ほかにも、面の広がりを表現するために同じ面積で区切られたメッシュ地図を用いることや、地域の特性が一目でわかる航空写真や衛星画像を用いることがあります。
主題図に必要なデータを準備する
主題図のメインとなるデータをそろえましょう。データの種類は以下のようなものがあります。
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統計データ
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地籍(土地の一筆ごとに示される情報)
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宅地利用動向
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土地利用区分・現況
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土地条件(土地の自然条件等)
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地質
目的に応じて最適なデータを選定してください。データの入手方法は、政府が公表している統計情報などのオープンデータを利用したり、場合によっては必要なデータを購入したりします。
表現の方法を決める
主題データは表現方法の選択肢が豊富です。代表的な例として、以下のような手法があります。
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色の塗り分け
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グラフ・図形
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ドット
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流線・直線
数値で表すことのできない定性的な情報は色の塗り分けが適しています。定量的なデータであれば、値を階級に分けて色を塗り分ける方法があります。
面積に依存せずデータの分布を表示したい場合はドットマップを用います。点の色や形を使い分ければ、複数のデータを同時に比較可能です。ほかにも、グラフを用いれば、数量の大小を視覚的に判断できますし、ヒトやモノの流れなど、動きのある情報を表現する場合は流線や直線を用いて表現します。
表現方法は、表示したいデータによってある程度まで選択肢を絞れます。既存の主題図をヒントにしながら表現方法を選択するのもおすすめです。
色分けの設定をする
色の塗り分けにおいては、何色を利用するかも重要なポイントです。例えば、数量が増加傾向にある場合は、赤のような膨張色を使います。一方で、減少していく方向に変動している場合は、青などの縮小色が使われる傾向です。
主題図用の配色は「Color Brewer」のカラーパレットがひとつの参考例になります。ぜひ活用してみてください。
主題図の活用方法
主題図を作成することで視覚的にデータを比較できるようになり、仮説の検証や分析が可能になります。そのため、研究だけでなく、街づくりやビジネスの成果を上げるためにも活用されています。街づくりやビジネスにおいて主題図がどのような用途に使われているかを詳しく見ていきましょう。
街づくりなどの都市計画
都市計画では、調査・分析・条件設定・計画立案などの各段階で主題図を作成しなければなりません。例えば静岡県のある市では、測量等で得たデータで以下のような主題図を作成しています。
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区域区分
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地区計画
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土地区画整理
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用途地域
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準防火地域
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その他の都市施設
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都市計画公園
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都市計画緑地
なお、都市計画用の主題図は「G空間情報センター※」でオープンデータ化されており、民間企業の都市開発にも活用できる状態になっています。
店舗の出店計画
店舗を出店する際は徹底的な情報収集と分析が必要です。立地が非常に重要な要素になるため、主題図が活躍します。検討材料として、以下のような情報を地図に反映し、可視化します。
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競合店舗
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ターゲット層の分布
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地域住民の所得層
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交通の利便性
これにより、新店舗を出店するのに適した候補地の情報が視覚的に理解できますし、社内外で共有されます。的確に候補地の特性を理解することで、よりよい既存店舗の配置転換・リニューアルの計画立案につながります。また、情報共有により意思決定までのやり取りもスムーズとなります。
交通計画
公共交通機関の利便性向上のためにも主題図が活用されています。国土交通省の公共交通に関するデータ分析の手引き(「公共交通に関するデータ分析の手引き」)でも、交通流動を可視化して、交通網のカバー状況を確認するために主題図を作成・分析した例が紹介されています。
具体的には、出発地データと目的地データの2つの主題図を作成し、GISを用いて重ね合わせることで、人口が密集しているエリアと目的地の位置を可視化しています。それぞれの位置を結ぶことで必要な公共交通機関の路線案を立案できたとのことです。
さらにこの手法で実際のバス停とバス路線のデータを重ね合わせれば、バス路線が不足している部分を可視化することも可能です。
主題図を地域開発やビジネスに活用しよう
主題図は位置情報の上に特定のデータを重ね合わせ、詳細な情報を地図上に可視化するものです。主題図を作成することで、「どこに」を基本情報としてあらゆることをわかりやすく伝えることができます。
しかし、用いるデータの質によって主題図のクオリティは大きく左右されます。正確な分析結果を導き、成果につなげていくには、位置情報に基づく詳細なデータが必要です。オープンデータや有償データを利用し、質の高い主題図を作成しましょう。
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