ゼンリンミュージアム所蔵古地図の見どころをご紹介

2020年6月に北九州・小倉にオープンした「ゼンリンミュージアム」。
「歴史を映し出す地図の紹介」を展示コンセプトとし、ご来館いただいた皆様からご好評をいただいております。
ミュージアムの特徴のひとつが、展示される古地図に対する作り手の思いや歴史・時代背景などを、さまざまなエピソード交えてお伝えする、専任の解説員「Z(ズィー)キュレーター」の存在です。
コロナ禍にあって、ご来館の難しい地図ファンの方もいらっしゃるかと思い、本記事では、Zキュレーターによる「歴史×地図」の魅力が垣間見える古地図の見どころをご紹介します。

【中世】人々の世界観と地図は、絶えず変化する

「TO図」8世紀以降 (Zキュレーター:新井啓太)

まずご紹介するのは、「TO(ティーオー)図」と呼ばれる一見、不思議な地図です。
地図には正確性が欠かせませんが、「TO図」に正確性という価値観は、一切考慮されていません。
現存する最古の世界地図は、紀元前700年前ごろのものと推定されています。その後、約1000年の間に、地球球体説の確立や測量技術の進歩により地図は精度を高めていきました。
ところがその後、キリスト教の教えに基づく世界観を地図にしたものが主流となり、ヨーロッパの地図は退化の時代を迎えます。
いったん発展した科学技術は否定され、自分たちを中心とした世界観で描かれました。

“T”は大陸を分ける地中海と河川を示し、“O”は海を示します。

地図というより概念かもしれませんが、8世紀ごろから15世紀ごろまでこのような“地図”が作られていたことも驚きです。
人の営みや世界観は絶えず変化し続け、それとともに地図も変化し続けているということが、この「TO図」から感じられるのではないでしょうか。

【江戸時代】歴史の影に隠れた、庶民のための地図

「改正日本輿地路程全図」(Zキュレーター:河野由美)

長久保赤水の「改正日本輿地路程全図」は、有名な伊能忠敬の伊能図より40年も前に作られたものです。
この地図が作られた当時はすでに商人などが国内を行き交う時代でしたが、地図が一部の人にしか広まっておらず、また情報量が少なかったため安心して旅をすることができませんでした。
そんな状況を見て赤水は正確な地図を作ろうと決め、道中案内図や諸国の地図を集め検証し、商人や旅人が各地で見聞きしたことをひたすら聞き取りし、地図にしていったのです。

そんな背景を知ると、自分で歩いてもいない、行ったこともない場所の精巧な地図を作ることへの信念の強さに驚かされます。

しかも、江戸時代にはこの長久保赤水の地図が民衆に広く使われていたにも関わらず、現代人にはあまり知られていません。
これほどのものが歴史の影に隠れてしまったということは興味深いですし、あらためて赤水の地図について知ることは面白い体験になるのではないかと思います。

【大正時代】市街地図から感じる、平和の意味

「名所旧跡 大津市街地図 商工業家案内」1914年(Zキュレーター:福島亮太)

こちらは大正時代の大津市の市街地図です。
この地図は、ぱっと見たところではただの写真付きの古い地図だなと思ってしまうかもしれません。
ですがこの当時、カメラはまだ普及していないのです。この大津市街図の写真を見た当時の人々は画期的だと感じたのではないでしょうか。
また、この地図からは、新聞社が発行しているためにカメラを使えたのではないか、明治後期以降、旅行に行くという習慣が一般市民に根付き始めたので旅館の電話番号などが掲載されたのではないかなど、さまざまなことを推察できます。

他の市街図をみると、横須賀のそれは日清・日露戦争といった戦争の時代を想起させる、“要塞司令部の許可”という記述が見られます。軍の許可がなければ地図を作れなかった。逆に言えば、平和でなければ地図は作れないのだと感じます。
時代や人々の生活を知ったうえで地図を見ると、また違った世界が広がるのです。


今回ご紹介した、中世の世界地図、江戸時代の歴史に隠れた地図、そして大正時代の市街地図。それぞれに様々な背景、歴史の流れ、作り手の思いを感じられるのではないでしょうか。
ゼンリンミュージアムでは、他にも「歴史を映し出す地図」の数々を展示し、皆様のご来館をお待ちしております。

ゼンリンミュージアム、初の企画展を開催

現在、ゼンリンミュージアム初となる企画展を開催中です。(2021年5月30日(日)まで)

「地図に描かれたCocuraと北九州」と題し、ミュージアムのある北九州・小倉の江戸時代から現代に至る地図や資料30点を展示いたします。

フランシスコ・ザビエルが布教に訪れた“Cocura(小倉)”は、江戸時代はじめ頃から西洋製の日本図に描かれるようになりました。
その後、明治時代以降の北九州工業地帯の形成や、高度経済成長期に三大都市圏以外で初の政令指定都市「北九州市」となってからの観光都市としての側面など、Cocuraから北九州へ変化していく様子を、歴史を映し出す地図や資料とともに紹介します。
また、会期中の平日(休館日を除く)にはZキュレーターによる企画展ガイドツアーも開催。
お近くにお立ち寄りの際は、ぜひゼンリンミュージアムへ足を運んでみてください。

ゼンリンミュージアム 第一回企画展「地図に描かれたCocuraと北九州」

会期

2021年1月9日(土)~2021年5月30日(日)

場所

ゼンリンミュージアム 多目的展示室

入館料

1,000円(保護者同伴の小学生以下は無料)

通常の入館料で企画展もご覧いただけます。

パンフレット・チケットホルダー代金を含みます。

Zキュレーターによる企画展ガイドツアー

開催日時

2021年5月30日(日)までの平日(休館日を除く) 14:00~14:30

参加費

無料(通常の入館料のみでご参加いただけます)

事前予約は不要です。

参加人数によっては、少人数のグループに分けて複数回実施します。

ご来館時の留意事項
新型コロナウイルス感染症対策を行っています。事前に下記URLを確認の上、ご参加ください。

ゼンリンミュージアム 基本情報

所在地

福岡県北九州市小倉北区室町1-1-1 リバーウォーク北九州14F

開館時間

10時~17時(最終入館16時30分)

休館日

毎週月曜日(祝日の場合は開館し、翌平日に休館)

入館料

1,000円(保護者同伴の小学生以下は無料)

アクセス

JR・モノレール 小倉駅より徒歩10分/JR西小倉駅より徒歩5分

お問合せ

093-592-9082

最新の開館スケジュールにつきましては、ゼンリンミュージアムWebサイトをご確認ください。

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