

本記事は2024年7月17日の当社開催のオンラインセミナーを要約した記事です。
今回のテーマは「建設DX入門編:BIM/CIMでの点群データと3Dデータ活用方法」。建設業界における最新のデジタルソリューションや事例が紹介され、多くの業界関係者が参加しました。
本記事では、セミナーの内容をもとに、ゼンリンが提供する3D地図データの特徴や、建設業界での具体的な活用方法をご紹介します。
こんな人におすすめ
3D地図データの特徴や活用事例を知りたい方
建設業界におけるDXのソリューションを探している方
国交省「PLATEAU」と3D地図データの違いを知りたい方

登壇者:遠山 啓(とおやま けい)
株式会社ゼンリン 東京営業所 所長
建設業界の課題とDXの必要性
当社からはまず、建設業界が抱える課題を提示しました。低い労働生産性、高齢化と人材不足、低い利益率など、さまざまな要因が建設業界の持続可能性に影響を与えています。これらの課題解決のカギとなるのが、デジタルトランスフォーメーション(DX)です。
当社はこれまで、地図データの提供を通じてDXの推進をサポートしてきました。住宅地図の提供からスタートし、カーナビ用地図やインターネット地図を手がけ、さらに3D地図データの制作を展開。現在では、ドローンやスマートシティ向けの高精度地図データも提供しています。
ゼンリンの3D地図データの特徴
ゼンリンの3D地図データは、大きく以下の3種類に分類されます。

3D都市モデルデータ
実際の街並みに近いリアルなテクスチャを使用したデータ。国内の21都市を整備し、主要交差点やジャンクションを正確に再現しています。(一部エリア。その他エリアは疑似的なテクスチャなどを用いております。)

広域3次元モデルデータ
国土地理院の地形データとゼンリンの詳細な建物情報を組み合わせた全国整備の簡易3D地図データです。

DXFデータ
設計用途で利用可能な平面データと3DデータがリンクしたDXF形式の詳細地図データ。AutoCADをはじめとする各種汎用CADソフトに取り込み可能な、DXF形式の詳細地図データです。
各種地図データの提供形式は、即時ダウンロードが可能な3D地図データオンライン提供サービスと、こちらでカバーされないエリアについて特注で対応するオーダーメイドサービスの二つがあります。
3D地図データオンライン提供サービス
必要な時に、必要な分だけいつでもダウンロードできるクラウド型サービス。即時ダウンロードが可能であり、都市計画検討やプレゼン資料の作成に適しています。
オーダーメイドサービス
汎用3D都市モデルデータ整備範囲外エリアおよび点群を用いたオーダーメイドの3D地図データ制作。精度重視で、プロジェクトに応じた制作が可能です。
BIM/CIMにおける活用事例
ゼンリンの3D地図データは建設業界において多岐にわたる用途で活用され、DX推進に貢献をしております。
プレゼンテーションでの利活用
青木あすなろ建設株式会社の事例では、レンダリングソフト「Lumion」にBIMモデルと3D地図データを配置し、竣工イメージのプレゼンに利用。周辺環境の3Dデータ制作にかかる手間を削減し、竣工イメージがより伝わりやすいプレゼンテーションを実現しました。
設計での活用
2D/3D CADソフトウェア「Autodesk AutoCAD」に当社のDXFデータを読み込んだ場合の利用イメージをご紹介。DXFデータでは、字(あざ)などの行政名や公共施設等の建物名称の表示も可能となっています。
シミュレーション・解析での利用
熱流体解析ソフトウェア「FlowDesigner」での活用事例も紹介されました。当社のデータを取り込むことでビル風などを計算したBIMのモデルの作成ができ、シミュレーションや解析結果を分かりやすく可視化することができます。
建設業界における活用事例
ゼンリンの3D地図データでは、BIMのデータを周辺環境のデータと組み合わせることによって、より没入感のある体験を生み出すことが可能となります。実際の建設業界における計画設計〜施工〜維持管理という一連のフローでのユースケースも紹介されました。
清水建設 様

3D地図データの有効活用によって、プレゼンテーションの質が向上。
ゼンリン広域3次元モデルデータに自社のBIMモデルを重畳し、周辺街並みのビジュアルを向上させ、スマートシティ構想に活用されました。


竹中工務店 様

協力会社に依頼していた周辺環境作成の時間が大幅に短縮。
周辺環境モデル作成の外注コストを削減できた分、BIM/CIMモデル制作に注力できる環境を実現し、相乗効果でプレゼンテーションの質が上がり訴求力の底上げにつながりました。


長谷工コーポレーション 様

周辺環境を知る「景観シミュレーション」、建設前と後の風の流れの変化を調べる「流体解析」、部屋からの眺めの「眺望シミュレーション」など、あらゆるシミュレーションに活用。確かな品質を保持したまま低コスト・即利用が可能なため、イメージ共有がスムーズになりました。

スマートシティや他分野への応用
3D地図データは、建設業界だけでなく、スマートシティプロジェクトやその他の分野でも活用されています。
スマートシティ
「スマートけいはんなプロジェクト」では、デジタルツインの基盤データとして使用されました。また、東京都の「3Dビジュアライゼーション実証プロジェクト」でも採用され、都市計画やシミュレーションに貢献しました。

スマートけいはんなでの広域3次元モデルデータ及びShape地図データ利用。

西新宿エリアを3D都市モデルデータで可視化した様子(デモコンテンツ)
映像制作や災害対策、研究分野
映画やメタバース環境の制作、災害対策として水害での浸水シミュレーション、地震発生時の津波シミュレーション、自動運転・ドライブシミュレーションなど、さまざまな用途で利用されています。
点群ソリューションと3Dモデル化
ゼンリンは高精度な地図データの可能性を拡げるべく、点群データの活用にも積極的に取り組んでいます。
点群データの取得代行
バックパッカー型の簡易測量機器をはじめ、台車や自動車、ドローン等の様々な手段を用いて、当社でも点群データを取得することができます。また、点群データの取得は屋外だけでなく屋内も取得可能です。
点群のデータ処理
点群データの分類やノイズ処理、樹木解析等を行い、手間がかかる点群データの事前処理を行います。ローカスブルー株式会社との提携に伴い、同社が開発・販売するオンライン点群データ処理・解析ソフト「ScanX(スキャン・エックス)」も取り扱っております。
製品情報:オンライン点群データ処理・解析ソフト ScanX(スキャン・エックス)
点群の3Dモデル化
点群データをメッシュ化し、高精度な3Dモデルを作成します。これにより、建設プロジェクトの計画やシミュレーションが効率化されます。
国交省の「PLATEAU」との違い
国土交通省が提供する「PLATEAU」データとゼンリンのデータの違いも解説されました。
提供範囲
当社のデータは全国規模で整備されていますが、PLATEAUは約130都市に限られています。(2023年国土交通省様HPより)

更新頻度
当社は年1回の更新を実施。一方、PLATEAUは不定期です。
道路表現
当社は道路形状やテクスチャ表現が詳細で、プレゼン資料やシミュレーションに適しています。
なお、実際の現場では両方のデータを組み合わせて使用するケースも多く見られます。例えば、ゼンリンデータの詳細な道路表現とPLATEAUの高精度な建物データを組み合わせることで、より高度なプレゼンテーションやシミュレーションが可能となります。
サービスの特徴と提供プラン
ゼンリンの3D地図データは、3D地図データオンライン提供サービスを通じて提供しており、以下の特徴があります。
迅速なデータ取得
専用のサービスサイトより、いつでも必要な時に必要なエリアを選んですぐにダウンロードが可能です。これにより、スピーディーな設計業務をサポートします。
汎用フォーマット対応
Autodeskの各種ソフト、流体解析ソフト「FlowDesigner」、Unityなど、さまざまなソフトウェアに対応しています。
編集機能
不要なオブジェクトデータの削除、マテリアルの変更が可能です。
利用頻度やデータ量に応じて5つのプランがあり、利用用途に応じたプラン・料金の選択が可能となっています。
まとめ
ゼンリンの3D地図データは、建設業界におけるDXの実現を強力に後押しするソリューションとして活用いただけます。リアルなデータを活用することで、設計・施工・維持管理の各段階で効率化とクオリティ向上が期待されます。
ウェビナーで紹介された活用事例や詳細は、当社の公式ホームページや過去のウェビナー動画でもご確認いただけます。
建設業界の未来を切り開くこれらのソリューションを、ぜひ活用してみてはいかがでしょうか?
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