

日本の建設業界は、少子高齢化や労働力不足、災害対応など、複数の課題に直面しています。これらの課題に対応するためには、現場での作業効率を抜本的に向上させる新たな技術や仕組みが必要です。この分野で現在注目されているのが、ローカスブルー株式会社が提供するオンライン点群データ処理・解析ソフト「ScanX」(スキャン・エックス)です。
ScanXは、これまで高価で専門性が求められていた点群データ処理を手軽に使えるツールとして、幅広いユーザーに支持されています。ゼンリンはローカスブルー株式会社との提携に伴い、ScanXも取り扱っております。本記事では、7月17日に開催したオンラインセミナーの内容を基に、ScanXの特徴、導入事例、優位性、業界全体への影響、さらにはその未来展望まで解説します。
こんな人におすすめ
点群データを初めて扱ったり、ICTをこれから始める方
手頃な価格で点群データ処理ソフトを探している方
ScanXの特徴や活用事例を知りたい方

登壇者:宮谷 聡(みやたに さとし)
ローカスブルー株式会社 代表取締役社長
建設業界を取り巻く環境と課題
労働力不足の深刻化
建設業界では、就業者数が1997年の685万人をピークに減少を続け、2022年には479万人にまで落ち込みました。これは、30%近い減少を意味します。特に地方では、若い労働者が減少し、高齢化が進んでいるため、現場での作業負担が増加しています。
2024年問題
2024年から施行された建設業界の残業規制は、従来の長時間労働を前提とした働き方を見直す必要性を強調しており、作業時間を減らしつつ生産性を向上させる仕組み作りが急務となっています。
ScanXが提供する解決策
建設業界や関連分野におけるこれらの課題に対応するために、ICT施工や3次元測量のツール開発が進められています。一方で、毎年新しい製品が登場するハードウェアや、点群関連のソフトウェアも多数存在しており、選択が難しいと感じている方も多いのではないでしょうか。
ScanXは、このような初期導入に関する悩みを抱える方にぜひ活用いただきたいオンライン点群処理ソフトウェアです。その主な特徴とメリットを以下に詳しく解説します。
初期導入コストの削減
ScanXは、従来の点群データ処理ソフトウェアに比べ、圧倒的に低コストで導入が可能です。月額3万円から利用可能であり、初期投資を抑えられるため、中小企業やICT初心者にとって導入のハードルが低くなっています。さらに、高価な専用機器やライセンス費用を必要としないため、長期的な運用コストも軽減されます。
シンプルな操作性による「わかりやすさ」
ScanXは、初心者でも使いやすい設計が特徴です。従来の点群データ処理ソフトは操作が複雑で専門知識を必要としましたが、ScanXは直感的なUIを採用しており、短期間での習得が可能です。また、シンプルな操作性に加え、自動フィルタリング機能を備えており、一定の品質を保ちながら効率的にデータ処理を行えます。
ソフト連携でデータの一気通貫管理
ScanXは、データ取得から解析、出来形帳票作成までを一つのプラットフォームで完結できます。ドローンやLiDARセンサー搭載のスマートフォンを用いて取得した点群データを取り込み解析するといったことも可能であり、ソフト毎にインポート・エクスポートの作業を行う手間を省くことができます。
このような特徴から、ScanXは他社製品と比較した場合に「ICTをこれから始める」人にとって特に適したツールであるとも言えます。
多彩な活用事例
ScanXは、建設業界で特に多くの導入実績を持っており、43都道府県・年間10,000件を超える現場で活用されています。ユーザーは測量会社、建設コンサルタント、建設会社の多岐にわたっており、建設⽣産プロセスに関わる全ての業者がユーザーに存在しています。以下に、実際の現場での活用事例を紹介します。

※2024年7月時点での情報です。
土木建設での活用
LiDARセンサー搭載のiPhoneとGNSSレシーバー取得の位置情報を組み合わせて、短時間で高精度な測量を行える3次元測量アプリである「OPTiM GeoScan」との連携を実現。遠隔でもほぼリアルタイムで3次元測量データを共有・解析できるようになりました。
災害対応

出典:Virtual Shizuoka
台風や地震といった災害時の被害状況把握の際にも、ScanXは遠隔からの災害査定で迅速な救助活動や現場復旧のサポートを可能にしています。
2021年の熱海土砂災害では、ScanXを用いて災害前後の点群データを比較し、被害を受けた建物の特定やクラス分類を迅速に行うことができました。また、2024年の能登半島地震では、被災地域の詳細な地形データ解析で復興作業を支援しています。
森林管理
ScanXは森林管理の分野でも活用されています。ドローンやバックパック型スキャナーを使用して広範囲の森林データを収集し、自動的に森林台帳を生成します。森林贈与税の使途としてリクエストがあり、共同開発された機能でもあります。
PLATEAUへの貢献

首都高速道路の点群データ分類
国土交通省が様々なプレイヤーと連携して推進する、日本全国の都市デジタルツイン実現プロジェクトであるPLATEAUにもScanXは貢献しています。首都高速道路の点群を高欄・道路面・主桁・橋脚などに分類する業務において、7~8割の工数を削減。インフラ管理の効率化を実現しました。
ScanXの5つの優位性
深層学習
年間10,000件以上の現場で活用されてきた自動分類をより発展させ、深層学習を用いた高度な分類を実現しました。分類可能な物体は、地表面・植生・建物・電線・樹木個体・自動車といった6種類以上あり、手動分類では手間や時間がかかっていた物体も、深層学習機能によって業務負担を軽減します。

操作性の高さ
初心者でも使いやすいUI設計とシンプルな機能を備えているため、現場での利用が容易です。他社製品では、専門知識を要する複雑な操作が求められるケースが多い中、ScanXは学習コストを大幅に削減しています。
コストパフォーマンス
他社製品では、数百万円を超えるライセンス費用が必要なケースが一般的ですが、ScanXは月額3万円から利用可能であり、導入コストが圧倒的に低いのが特徴です。また、保守運用費・データ管理費も不要で、長期的なランニングコストを抑えられます。
サポート体制
まずは「3Dデータに慣れる」というところからスタートし、時には他社ソフトとの組み合わせての使用等もご提案させていただきながら、お客様のビジネスゴールである「業務改善・人材育成」「売上拡大」を達成するための「点群データの利活用・定着」の実現をサポートします。
柔軟なデータ連携
システム連携により、シームレスなデータ活用を実現し、測量・施工・検査のはじめから終わりまで、一気通貫した業務ができます。データのエクスポートやインポート、ソフトごとに応じたファイル形式の変換などの業務を削減します。
他社ソフトとの連携も強めており、現時点では株式会社オプティムの3次元測量アプリ「OPTiM Geo Scan」、株式会社スカイマティクスのドローン測量サービス「KUMIKI」の2プロダクトとの連携を実現しています。
業界全体への影響とScanXの未来
3Dデータの普及により、建設業界や関連分野は大きな変革を迎えています。従来の2D図面に基づく作業から3Dデータを活用した施工管理や測量作業への移行が進んでいることで、作業の精度が向上し、全体の生産性の改善が期待されています。さらに、災害対応や森林管理など、多様な分野への応用が進んでおり、社会的な課題解決にも寄与しています。
今後もScanXは、3Dデータ活用の基準を引き上げ、新しい働き方や社会課題の解決に貢献していくでしょう。
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