建設DXが求められる理由とは?導入のメリットや求められるツールも紹介

建設業のみならず、さまざまな分野で推進されているDX化は、働き方改革をもたらすとされています。では建設業ではどんな理由でDXが必要とされているのでしょうか。また、建設業のDXにはどんな技術が使われているのでしょうか。本記事では、建設業におけるDXの概要と建設業界でDXが求められる理由、建設業界で使われているDX技術について解説します。

建設DXとは

DXの概要を見たうえで、建設DXの定義について確認します。

そもそもDXとは?

DXとは「Digital Transformation(デジタル・トランスフォーメーション)」の略で、経済産業省の「デジタルガバナンス・コード2.0」によれば、以下のように定義されています。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」

さまざまな業界でDX化が進められている背景として、「2025年の崖」と呼ばれている現象があります。2025年の崖とは、ITシステムの老朽化、肥大化や複雑化。それらによるシステムのブラックボックス化やIT人材不足により、大きな経済的損失が生じるというものです。

DXと建設DX

DXとは単なるデジタル技術の利活用にとどまらず、業務そのものや組織、企業文化や風土の変革にまで波及するものです。建設DXも基本的に同じ概念で、広くはDXに含まれます。ここでは、デジタル技術を活用してこれまでの建設業の業務遂行方法やビジネスそのものを変革することを、「建設DX」といいます。
建設業界では、これまでも新しい技術を導入するなかで、プロセスごとの効率化・建設機械の多機能化などを進めてきましたが、まだ変化の途上です。次章以降、建設DXについて紹介します。

建設業界の課題とDXが求められる理由

建設業界における課題と、建設DXが求められる背景について紹介します。

手作業や危険な作業が多い

建設業界ではデジタル化が進んでいない傾向があり、手作業による業務が残る企業も少なくありません。また、現場ごとに環境が大きく異なるため、作業の標準化が難しいこともデジタル化が進まない理由のひとつです。
高所での作業や重いものを持ち運ぶ作業など危険な作業も多く、事故も多いです。一般社団法人全国建設業労災互助会がまとめた「建設業における労働災害の現状」を見ると、状況は芳しいものではありません。令和2年の業種別死亡災害発生状況において、死亡者数は建設業がトップとなっています。

若年人材の不足

国土交通省の「最近の建設業をめぐる状況について」によると、建設業界は他業種よりも高齢者の割合が多く、次世代への技術承継が大きな課題となっています。建設業就業者のうち、3割以上が55歳以上となっており、高齢人材の退職前に若年人材を確保したうえで技術承継を行わなければなりません。

過重労働

同じく国土交通省の「最近の建設業をめぐる状況について」では、建設業の長時間労働についても指摘しています。工期に間に合わせるための長時間労働や、休暇の取りにくさに加え、現場での危険な作業などは解決すべき問題です。また2024年4月から改正労働基準法が適用(※)されることにより、原則として時間外労働時間の上限が「月45時間」「年360時間」となります。上限を守らなくては法令違反になってしまいます。
※改正労働基準法は2019年4月から施行済み。ただし、建設業は猶予期間が設けられていたため2024年4月から適用

建設DXを導入するメリットとは

建設DXを導入するメリットは次のとおりです。

作業員の安全確保

DXを取り入れることで、作業員の安全を確保しながら業務を進められます。例えば、高所の状況確認においてドローンを使用することで、危険性の高い作業を減らすことができます。また、重機にAIカメラを設置することで周囲に人がいることを察知して衝突事故を防止するような技術も開発されています。

人手不足の解消

重機の遠隔操作、カメラを通じた遠隔地からの現場確認などが行えれば、従業員が現場に行かずとも業務を行うことが可能です。移動時間の削減と省人化が進み、少ない人手で生産性を上げることができるため、人手不足の解消につながります。また現場以外の場所からも指導が行えるので、技術継承もスムーズになるでしょう。

長時間労働の緩和

機械に任せられる仕事が増えれば、それだけ人の労働時間を減らすことができ、長時間労働の解消につながります。残業時間を減らすことができれば、法令遵守にも役立ちます。

建設DXで用いられるツール

建設業界で効果を発揮するDXツールには、次のようなものがあります。

BIM/CIM

BIMとは「Building Information Modeling(建物情報のモデル化)」、CIMは「Construction Information Modeling(建設情報のモデル化)」を表す。構造物を3次元化するデジタル技術のことで、これまでの2次元的な図面では再現性が低く、実際に建ててみないとわからない部分が生じてしまっていました。そのため、建設関係者間で構造物の完成イメージを共有できない、設計段階での高度なシミュレーションが難しい、などの課題がありました。
しかし、BIMやCIMにより立体的に表現することで、高い再現性、高度なシミュレーションが実現します。
さらに弊社の「3D地図データ」はBIM/CIM業務をさらに後押しします。現場周辺の建造物・道路・地形などを可視化し、プレゼンテーション資料の質を向上させます。また、必要な時にすぐ必要なエリアの3D地図データを活用でき、建設予定の建物によるエリア一帯の風や熱の解析をスピーディに行えます。

AI

AIとは「Artificial Intelligence(人工知能)」の略で、コンピュータが自ら学ぶことができるようになったもの。建設業では幅広い利用が可能です。例えば現場の画像をAIが分析し、工事の進捗状況を判断したり、現場の状況をAIがチェックすることで事故の防止に役立てたりすることが可能です。
ほかにも、建設重機をAIが自律制御することで無人操縦を可能とすることや、建物構造に問題がないか計算・解析したりすることにも活用されています。

センシング技術

センサーと呼ばれる感知器などを使用して対象物のさまざまな情報を計測、情報を数値に変換する技術の総称です。重機に取り付けて正確な位置情報を把握できれば、遠隔操作に役立ちます。また、コンクリートの建造物にレーザを照射して、破損や劣化状況を察知する技術もあります。
さらに、現場作業員のヘルメットにセンシング技術を取り入れた機器を付け、健康状態を把握するといった労働環境の改善にも用いられています。

IoT

IoTは「Internet of Things(モノのインターネット)」のことで、モノに通信技術を搭載し、センサーを通じて収集したデータをさまざまな用途に活用する技術です。IT技術の発展により、インターネットに接続できる端末は多岐にわたり、家電や自動車、工場の設備や建設設備なども接続できるようになりました。IoT技術によって、前項のセンサーからのデータ収集も可能となります。また、IoTがデータを収集するからこそ、AIもデータ解析・活用ができるのです。

建設DXは急務。課題解消のためにも推進しよう

建設業においては、手作業や危険な箇所での作業、人手不足、過重労働などさまざまな課題があります。しかし、これらの課題はDXの推進によって解決できる可能性があります。例えば、手作業で行っていた作業の自動化、高所など危険な作業の機械化、業務効率化による省人化などを行えば、作業員の安全を確保しながら人手不足や過重労働を解消できるでしょう。
DXを推進するための技術にはさまざまなものがありますが、なかでも建物のデータを3次元化するBIM/CIMは画期的な技術です。ただし、BIM/CIMが効力を発揮するのは設計や施工の段階であり、事前の計画段階や、施工後の維持管理についてはGISという情報基盤が役立ちます。建物の周辺地域のハザード情報、地形や地質などを地図上で可視化・解析できるためです。

弊社では、全国の高精度な建物情報を集めた建物ポイントデータを各種GISアプリケーション上で地図上に可視化できます。建物情報を一元化して確認したいなら、ぜひゼンリンの建物ポイントデータをご活用ください。

関連記事

Shapefileとは?主なメリットや構成、使用時の注意点を解説

Shapefileとは?主なメリットや構成、使用時の注意点を解説

不動産の業務効率化が必要なのはなぜ?メリットやおすすめのシステムも紹介

不動産の業務効率化が必要なのはなぜ?メリットやおすすめのシステムも紹介

GISとは?メリットや活用例をわかりやすく解説

GISとは?メリットや活用例をわかりやすく解説

Project PLATEAU(プラトー)とは?特徴や活用例を詳しく解説

Project PLATEAU(プラトー)とは?特徴や活用例を詳しく解説

SIP4Dとは?災害時の迅速な対応を可能にする仕組みを解説

SIP4Dとは?災害時の迅速な対応を可能にする仕組みを解説

もっと見る
  1. 商品・サービス
  2. 情報・知識
  3. 建設DXが求められる理由とは?導入のメリットや求められるツールも紹介