意思決定の加速化が現場力向上のカギに――断面処理・土量計算自動化によるデータ処理の革新

建設・土木業界では、ドローンやレーザースキャナーによる3次元測量の普及が急速に進んでいます。点群データを活用した土量計算や断面図作成が可能になり、施工管理の精度は飛躍的に向上しました。しかし、取得した膨大な点群データには草木・人物・機材などのノイズが含まれており、その除去作業に多大な時間と労力を要します

株式会社竹中土木(以下、竹中土木)では、点群データの解析・可視化に点群処理ソフトウェアを活用していましたが、ノイズの除去や欠損部分の補完作業に膨大な時間がかかっていました。そこで導入したのが、ローカスブルー(ゼンリングループ)が開発するクラウド型点群処理サービス「ScanX」です。 AIによる自動フィルタリング機能により、法面の草木除去作業を丸1日からわずか約1時間へ短縮。既存ソフトとの効果的な併用で、現場のデータ処理ワークフローを大きく改善しました。

今回は、ScanXの導入経緯と活用方法について、竹中土木 生産本部生産支援部ICTグループの加納健太郎様にお話を伺いました。

課題

  • 点群データのノイズ除去(草木・人物・機材等)に丸1日以上かかる
  • 既存ソフトの点群補完機能は擦り付け精度が低く見栄えに課題
  • 作業の取り消しが困難で、ミスのリカバリーに大きなストレスがかかる
  • 日々変化する工事現場に対し、断面図や土量データの迅速な出力が求められていたが、出力に丸1日かかっていた

ご提案内容

  • クラウド型点群処理サービス「ScanX」の導入
  • AIによる自動クラス分類機能で、ノイズ・地表面・植生・構造物等に判別
  • 地表面点群補完機能により、均一なピッチによる点群データ欠損箇所の補完を実現
  • 既存の点群処理ソフトと併用し、前処理と成果物作成の役割を明確に分担

導入効果

  • 法面の草木除去作業が丸1日から約1時間に短縮(約85%の時間削減)
  • 点群の均一補完により、土量計算の精度が向上
  • ダンプ手配・契約の数量算出の精度が向上し、過不足によるロスを削減
  • 作業のやり直しが容易になり、心理的ストレスが軽減

導入企業様

株式会社竹中土木

生産本部生産支援部ICTグループ 加納 健太郎 様

生産本部生産支援部ICTグループ
加納 健太郎 様

【所在地】

東京都江東区新砂一丁目1番1号

【資本金】

70億円(2026年1月現在)

【従業員数】

1,008名(2026年1月現在)

【事業内容】

土木工事および建築工事の請負、設計および監理、不動産関連業務、地域・都市・海洋開発および環境整備事業、前各号の業務に係わるエンジニアリング、マネジメントおよびコンサルティング業務

日々変化する現場が求めるスピーディーなデータ出力

――まずは御社の事業概要と、点群データの活用状況について教えてください。

加納氏:

竹中土木は、道路・橋梁・トンネルなどの交通インフラをはじめ、ダム・河川・上下水道など幅広い土木工事を手がける総合建設会社です。6年前にICT施工の推進を担う「ICTグループ」を設置し、ドローンが普及し始めたタイミングで点群測量を開始しました。 広大な現場を中心に、工事の進捗管理や土量計算、断面図の作成に点群データを活用しています。

――従来、点群データの処理においてどのような課題がありましたか。

加納氏:

課題は大きく2つありました。

1つ目は、ノイズ除去に膨大な時間がかかることです。現場で取得した点群データには、草木や機材、人物など本来不要なノイズが含まれています。これ手作業で一つひとつ選択して削除していくのですが、広い現場だと丸1日かかることも珍しくありません。また、一見すると残すべき点群と消すべき点群の判断が付きにくく、ミスも起きやすい状態でした。

さらに深刻だったのが、既存の点群処理ソフトを用いる方法では作業の取り消しがほぼできないことです。削除しすぎた場合にも元に戻せません。別途バックアップを取っておかなければ復元できませんし、間違った状態でうっかり保存してしまえば作業を最初からやり直すしかありません。この緊張感が、作業者にとって大きなストレスになっていました。

2つ目は、点群補完機能の精度です。 点群データは計測機器や手法の特性上、密度にムラが生じます。土量計算を正確に行うには、点群を均一に補完することが必要です。土量計算では、点群データから一定間隔で区切った立体(四角柱)を作成し、そのなかの点群の平均高さを算出して体積を求めます。ですが、点群の密度がバラバラだと、この四角柱ごとの精度にばらつきが生じてしまいます。

従来利用していた点群処理ソフトでは、既存の点群データと新たに補完した部分の境界がうまく繋がらず、不自然な段差や「浮き」ができてしまい、データ全体にズレが生じてしまうことがありました。こうしたズレや段差が残ると、見た目の違和感だけでなく、地形断面や土量の計算にも影響します。 土量計算の誤差が大きいと、実際に搬出入する土量との差が大きくなり、ダンプ手配や工程遅延につながるなど、工事全体に大きな影響が出てしまうのです。

――点群の処理には迅速な作業が求められると聞きました。その理由についてお聞かせください。

加納氏:

工事現場は日々進捗していきます。点群を取得した次の日には、現場はもう同じ状況ではありません。日を追うごとに新しい機械が投入されたり、地形が変わったりしてしまいます。

そうしたなか、現場が求めているのは、断面図や土量データをスピーディーに出力することです。早くデータを出せればその分、工事の進行がスムーズになります。例えば、土量計算の結果がわかれば、「明日ダンプを何台呼ぶか」をすぐに決められます。人手不足や効率化も重要ですが、まず「いかに早く現場の最新状況をデータ化して活用できるか」が工事現場の最優先事項だと感じています

「これだ」と直感した自動クラス分類機能

――「ScanX」をどのような経緯でお知りになりましたか。

加納氏:

ゼンリンとはもともと3D地図データでお付き合いがありました。 2024年の夏ごろに、営業の方からScanXをご紹介いただいたんです。 上司の河部と説明を聞いたのですが、現場の負担を一番減らせると直感し「これはいい」とその場で導入を決めました。

――特にどのような点に魅力を感じましたか。

加納氏:

一番の魅力は、草木などの不要な点群ノイズを自動で分類・除去してくれる「自動クラス分類機能」です。最初にこの機能を見た瞬間に、これだ、と直感しました。例えば、草がぼうぼうに生えた法面のデータから、植生のデータを人力で除去しようとすると丸1日以上かかります。 それがScanXを使うと、約1時間で自動で綺麗にフィルタリングできる。人力でやるとミスも起きやすいのですが、ScanXならその心配もありません。

もう1つ、実際に使い始めてから便利さを実感した機能が「地表面点群補完」です。土量比較では点群から四角柱を作って平均を取るので、点群の密度がバラバラだと精度が落ちてしまうのです。ScanXは指定したピッチ(例えば5cmや25cmなど)で点群を補完してくれるので、擦り付けも綺麗で、均一な面を作ってくれます。 この補完機能で均一にすることで、土量計算の精度が安定するようになりました。

――導入にあたって懸念点はありましたか。

草木など不要な点群が広範囲に含まれている。

自動クラス分類で草木のノイズを除去。地表面を明瞭に抽出。

加納氏:

操作がとてもシンプルなので、特に懸念点はありませんでした。取り込む点群データを指定し、その点群データの取得方法を選び、画面の案内通りに選択していけば、あとは自動で処理してくれます。

手動分類機能も搭載されていますが、自動クラス分類の精度がいいのでほとんど使いません。出てきた結果はそのまま現場で活用しています。また、ScanXは一括処理なので、やり直したければ自動クラス分類をもう一度かけ直せばいい。既存の点群処理ソフトとは違い、「一括処理のため再実行しやすい」「工程の巻き戻しより再処理でリカバリーしやすい」という心理的な安心感も大きな魅力です。

前処理と解析を分担する効率的な併用ワークフロー

――「ScanX」と既存の点群処理ソフトを併用していると聞きました。どのように使い分けているのかお聞かせください。

加納氏:

ScanXで前処理をした後、既存の点群処理ソフトで解析・可視化・共有しています。

まずScanXで自動クラス分類と点群補完をかけて、綺麗なデータを作成。そのデータを既存ソフトに取り込んで、土量計算や断面抽出、可視化を行います。

点群の閲覧や土量管理、断面抽出といった解析機能は既存ソフトの方が充実しています。一方で、フィルタリングや補完の精度には課題がありました。 ScanXで前処理の品質を上げてから渡すことで、それぞれの強みを最大限に活かせるようになりました。

法面の草木除去が丸1日から1時間に短縮

――具体的な導入効果を教えてください。

加納氏:

法面の草木除去では、人力で丸1日かかっていた分類作業が1時間で完了するようになりました。 時間にして約85%の削減です。 また、土量計算の精度も大きく向上しています。

また、従来はエリア内の何点かで標高を測って平均を出していましたが、測るポイントの数は人によってバラバラで、属人化していました。 点群なら数万点以上のデータで計算するので、はるかに正確です。

――土量計算の精度向上は、具体的にどのようなメリットにつながりましたか。

地表面の高低差をもとに、ダンプ手配や必要な土量を計算

加納氏:

例えばダンプの手配です。 土を運ぶ業者と「100台」で契約して、実際には90台しか必要なかったとすると、10台分は損失になります。 逆に100台で契約して110台必要になれば、10台分のオーバーコストです。 正確な数量がすぐにわかれば、正確な台数を即座に発注できます。 契約の過不足リスクがなくなりますし、翌日の台数調整も迅速にできるようになりました

仮に1cmの厚みの違いでも、10ヘクタールの現場では何立米もの差になります。 ドローンの計測精度はプラスマイナス5cmなので、少しでもフィルタリングや補完の精度を上げて誤差を減らさなければなりません。 ScanXの均一な点群補完は、そこに大きく貢献しています。 地表面の抽出精度については、私たちの用途では100点と評価しています。 フィルタリングのやり直しが必要になることはほとんどありません。

クラウド共有の活用と計測機器の小型化への期待

――今後の課題や展望があればお聞かせください。

加納氏:

ScanXはクラウドサービスなので、一瞬で共有用のURLを発行し、関係各所にすぐに点群データを共有できます。ただ、点群データを扱うこと自体への理解がまだ社内に浸透しきれていない部分があり、社内ではまだ十分に活用しきれていません。

本来は、現場の方と点群データを共有しながらフィルタリング作業を進めたいと考えています。 i-Con部のメンバーは現場の人間ではないので、削除すべき箇所を間違えることもあります。 そうした作業をクラウドで共有しながら現場で確認できれば理想的です。従来より環境要件のハードルを下げられる余地があるので、今後は誰でも場所を問わずスムーズに扱えるようになることを期待しています。

また、計測機器の小型化にも注目しています。 最近ではスマートフォンやタブレットでも十分に実用的な測量ができる時代になりました。 下水管の位置確認のための試掘のような用途では、すでにかなり普及しています。

今後は、専門部署が広範囲・高精度の測量を担い、現場単位では日常的に小型機器で必要な計測・確認を行うという役割分担が定着していくでしょう。その一方で、小型機器で取得した点群にはノイズが多くなりやすいという課題もあります。しかしながら、ノイズが多くともiPhoneでデータが取れるようになったらニーズはもっと深まると思います。だからこそ、ScanXのような自動フィルタリングや効率的な点群処理技術は、これからの現場にますます欠かせないものになっていくはずです。今後も、現場ごとの最適なデータ活用を、最新技術とともに追求し続けていきたいと思います。

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