社内に発足した専門家が集う新たなチーム、彼らに課されたミッションとは

梓設計はこれまで、東京国際空港旅客ターミナルや、埼玉スタジアム2002、新しい国立競技場など、日本を代表するランドマークの設計、建築を手掛けてきた。現在、社員数は600人を超え、関わるプロジェクトの数も年々増加。それに伴い、社内における分業化も着々と進行中だ。そんな中、2019年に発足したのがアーキテクトのデザイン体験をより良くするためのプロダクトを作るAX-TEAM(AX:Architectural design Experienceの略)というスペシャルチームである。このチームに課されたのは、日常的に必要とされる社内のプレゼンテーション資料などを視覚的にレベルアップするということ。本チームのメンバーに、新たに担う業務の中身や、わずか一年足らずで実現したワークフローの大幅な変革について話を聞いた。

(左から)
AX-TEAM ビジュアリゼーション・アーティスト 笠 保奈美氏
AX-TEAM チームリーダー兼アートディレクター 奥村 剛氏
アーキテクト部門 薮下 海音氏
AX-TEAM BIMコーディネーター 曽我 崇弘氏
AX-TEAM コンピューテーショナルデザイナー 陳 智青氏
アーキテクト部門 柳田 卓哉氏

「街のビジュアライゼーション」をより魅力的に、より正確に

新規案件の受注を左右するコンペやプレゼンテーションの場。その際、重要なツールとなるのが設計の意図や意匠をイメージとして伝えるビジュアル資料だ。導き出されたクリエイティブなプランを時には紙で、時には動画で表現するこれらの資料。より魅力的に、より精密に、設計の主旨を表現することが求められる。

「以前はこうした資料を専門的に作成するチームがありませんでした。設計士が考案したプランをその周囲にいる若手が資料として作っていくというスタイル。建築物の周囲を取り巻く街の立体的なビジュアルは、国土地理院の地図や航空写真を参考に数値を手入力していくというやり方で作っていたんです」(曽我氏)

そのような社内環境を変えるべく、2019年10月に立ち上がったセクションがAX-TEAMだ。集まったのはCGやVR、AIなど様々な専門領域を持つメンバーたち。梓設計の考案するデザインを他者に対してより良く、深く伝えることをミッションに掲げ、新たな取り組みに挑むことになった。

「日頃、設計者がアウトプットするデザインを視覚的により印象的に見せるため、様々な手法を駆使してビジュアライズすること。そのような仕組みを作るのが私たちの仕事です。これまでは、“提案力”を改善するという視点や機会が少なかった。一方、CGやVRなど様々な得意分野を持つエキスパートが社内に在籍していました。そのような力を集めて一つのチームにし、設計士が作ったものをより質の高い形で提案する。社内を横断してこのような業務に取り組んでいます」(奥村氏)

AX-TEAMが着目した業務効率化の決定打「3D地図データ」の採用

新たな提案力を獲得すべく、AX-TEAMが着目したのがゼンリンの「3D地図データ」だった。建築物や都市開発の完成イメージを他者へと伝えるためには、より正確でより美しい立体的な周辺環境の描画が必須である。従来は膨大な数のビルや住居、公園や農地を表現するのに、国土地理院の地図や航空写真を駆使して、言わば架空都市をモデリングしなければならなかったのだ。

「こうした作業は基本的に手作業で行っていました。広大なエリアの中のすべての建物について、おおよその高さなどを割り出し、ひとつひとつ数値を入力。学生さんのアルバイトの手なども借りながら力技で架空の都市を描画していたんです」(奥村氏)

「しかもすべての建物において正確な数値を入手するのは不可能ですから、おおよそこのくらいだろうという予想の数値を入力する場面も多かった。あくまで全体のイメージを完成させることに重きを置いていたんです」(曽我氏)

「3D地図データ」の存在を知った奥村氏は、すぐに導入を検討する。全国のナビゲーションシステム用データを保有するゼンリンの知財を利用し、従来よりも効率良く、且つ高精度なビジュアライゼーションを実現しようとしたのだ。それまで莫大な時間や労力を割いてスタッフが手掛けていた、3Dによる街のモデリング作成。かつては1人のスタッフが1ヶ月もかけて作成する場面もあったという。そんな中で「3D地図データ」の導入によって、ワークフロー自体が大きく変化する。

導入直後から圧倒的な効果を生み出しワークフローの枠組みが変わる

「3D地図データ」の導入後のインパクトは、特に効率面において、各人の次のコメントから読み取れる。

「極端な例で言えば、1ヶ月くらいかかっていた作業が数時間で済んでしまう。もともと2Dのデータを手作業で3Dに起こすということもやっていたくらいですからね」(陳氏)

「これまで、写真を貼り付けて終わりにしていた部分も、立体的に表現してみようというように考え方も変わってきました。3D地図データの利用コストはかかりますが、驚くほど効率化が進みました」(奥村氏)

「正確な数値が入手できない場所については、迷わずそのエリアの3D地図データをダウンロード、という思考回路になっています。仕事の進み方は大きく変わりましたね。私は学生の頃からプレゼン用資料の作成に関わっていたんですが、その時すでに、誰かが作った地図データを使えたら手っ取り早いのに、と考えていたんです(笑)」(薮下氏)

若手スタッフにとってはすでに「3D地図データ」の利用がデフォルトの状態になった今、かつてのようにあらゆる数値を調査し、手入力で2Dから3Dに起こす手間はもはや想像さえできないという。

「私は手作業で数値を入力して街をビジュアライズする、といった経験がありません。3D地図データを利用したワークフローしか知らないんです。ですから、手作業でゼロから立体的な街をつくるという大変さが想像もつかないんです」(笠氏)

このように、「3D地図データ」の活用がビジュアライゼーションの新たな常識となり、ワークフローの枠組みを大きく変えた。

使用回数制限なしのオンライン化によって本格的な「3D地図データ」の利用がスタート

プレゼンテーションツールだけでなく、設計段階でも正確な街の地図は求められる。ゼンリンの「3D地図データ」導入後は社内の設計士もこのデータを有効活用。敷地、空間、建物の条件をデータとして揃えられることで、設計における業務効率化にもつながっている。

「空港など大きい施設の周辺敷地を表現する際、ファサードのサインをVRで表現できないかと設計士に言われたことがあります。設計検討の段階では、そんな用途にもこの3D地図データが利用できると分かりました」(柳田氏)

「3D地図データを利用すれば街全体を簡単にビジュアル化できる。VRの分野で間違いなく活用は拡大すると思います」(薮下氏)

導入からこれだけ利用価値を感じられたというゼンリンの「3D地図データ」。当初は1件ずつゼンリンと契約し購入するというスタイルだったが、「3D地図データオンライン提供サービス」への移行に伴い、さらなる用途の拡大が見込まれている。

「3D地図データの導入直後、社内での利用は数件程度にすぎませんでした。なぜならひとつの3D地図データを利用、購入するのに都度、社内稟議を通さなければならなかったからです。でも利用価値があるとすぐにわかった。だから“3D地図データオンラインサービス”に切り替えたんです。その後は使いたい時にオンライン上で必要なエリアを必要なときにすぐダウンロードできるようになった。しかも使い放題のプランなので点数を考えずにどんどん利用できる。このような環境になったので、これからは新たな用途が自然発生的に生まれてくるかもしれません」(奥村氏)

都市開発プロジェクトで使用された「3D地図データ」

コスト面に加え、疲労軽減のメリットを強く実感高まる創造性によって生み出される今後の展開に注目

「3D地図データオンライン提供サービス」の利用を開始してからは、ダウンロード回数が大幅に増えた。AX-TEAMのメンバーは口々に、この回数が今後、益々増加していくとコメントする。

「使い放題のプランはコスト面でのメリットも感じますが、なにより、社員の疲労が軽減されたメリットを強く感じます。これまでかかっていた膨大な作業がなくなった分、頭と手を他のことに使える。より創造的な業務に時間をさけるようになったということですね」(奥村氏)

データの軽量化やBIMデータへの円滑な活用法など、AX-TEAMのメンバーからは「3D地図データ」への要望が次々と出てくる。こうしたフィードバックを重視し、ゼンリンでは都度、データ提供の手順やデータそのものを微調整し、その使用環境は進化を続けている。近未来、ゼンリンの「3D地図データ」が梓設計のクリエイティブのなかでどのように活かされていくのか、興味は尽きない。

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