[プロジェクトストーリー]訴求力の底上げや合意形成を促進

全社導入により設計の品質向上を実現させた3D地図データの活用

近年のBIM推進の流れに先んじて活用を進める3D地図データ

東京ドームやあべのハルカスなどをはじめ、全国で有名なスタジアム・アリーナ、美術館、商業施設等、後にランドマークとなる建築物を数多く施工してきた株式会社竹中工務店。それだけに、建築物とその周辺との調和を確認するための「景観シミュレーション」には30年以上も前から取り組んできたという。そんな中で活用されてきたのが、ゼンリンの「3D地図データ」だ。現在は、オンラインによる提供に切り替えられ、業務の効率化のみならず、設計の品質向上にも寄与しているとのこと。その詳細をBIM推進室、大阪本店設計部の4名に伺った。

大阪本店 設計部 情報・事務部門 副部長 馬場 祐次氏
BIM推進室 課長 小柳 佳久氏
大阪本店 設計部 BIM推進グループ 部長 鞆野 淳司氏
大阪本店 設計部 BIM推進グループ 専門役 能勢 浩三氏

周辺環境の再現に多くの時間とコストが発生

主に初期の企画段階において、「景観シミュレーション」を作成し、社内関係者や建築主との意思疎通を図ってきた竹中工務店。「2次元よりも3次元の方がはるかに説明しやすいですよね。昔はプロジェクトの大小にかかわらず、必要に応じて作っていましたが、近頃は法的な説明責任も伴って作成するケースが増えました」(鞆野氏)。また近年、BIMの推進が活発になっており、竹中工務店でも先んじて、プレゼンテーション向けのCGによる完成予想パースや動画の作成に3Dモデルの活用が常態化している。そんな状況の変化に伴い、次のような悩みが生じる。「当初は白地図をベースに社内で作成していたために工数が膨大にかかり、もしくは都市データ3Dモデル作成を協力会社に委託していましたが、そのコストも1件あたり数十万円と決して安価ではありませんでした」(馬場氏)。そんな中で、既に業界内で定評のあったゼンリンの「3D地図データ」に着目することになる。

即利用可能、低コストと確かな品質を兼ね備えたゼンリンの「3D地図データ」を採用

社内で使用したいとの声が高まるとともに、導入を開始。その決め手となったのは、即利用可能で、確かな品質を兼ね備えていた点だという。「建物周辺の3Dモデルの再現については、広範囲の3Dモデルデータをインポートするだけで完了する。これだけの範囲と質のものをゼロから作り上げるのは不可能でしたね」(馬場氏)。このように、これまで作成に掛かっていた工数が削減されることで、コストの圧縮効果も期待できた。また、建物高さ情報など、シミュレーションに必要な要所を押さえた品質面においても納得のいくものだったようだ。

使用頻度の高まりと共に入手プロセスに改善点も

一方で、使用頻度の高まりと共に、3D地図データを都度入手することに対して次のような改善点が生じる。「定義区画が決まっているので、建設計画地に応じて4ブロック単位で購入することがありました。さらに、データを受け取るまでに1週間から10日間ぐらいかかっていました。主にこの2つがネックでしたね」(馬場氏)。また、そうして入手した3D地図データは、使用許諾の制約から同一プロジェクトでしか使うことができない。例えばAとBという2つの建築計画地が同じブロック内にあった場合でも、それぞれのプロジェクトで同じデータを購入する必要がある。そうした事例は発生しなかったものの、この点についても懸念を感じていたようだ。

3D地図データの利用環境がオンライン化され活用が格段に広がる

そこでゼンリンは、新たに提供を開始する予定であった「3D地図データオンライン提供サービス」を提案。同サービスは、「3D地図データ」を利用ソフトに最適な仕様で必要なときに必要な分だけダウンロードすることができ、用途や使用量に応じた5つの料金プランが用意されている。その中でも最上位のプランである「完全使い放題プラン」は契約期間内のダウンロード回数に制限がないため、竹中工務店はサービス提供開始後すぐに、その点に大きなメリットを感じ、契約に至った。
その後、導入効果がすぐに表れはじめる。採用後、わずか半年間で300件近くも都市データのダウンロードがなされているのだ。「当初はコスト面での心配があったのですが、この数字だけを見ても導入したメリットは大きいと言えるでしょう。また、オンライン提供サービスの契約はID単位ではなく企業単位なので、本社や支店の区別なく使い放題というのも助かっています」(能勢氏)。加えて、ダウンロードしたデータについては、プロジェクトごとの権利の縛りがないため、汎用性の高さについてもメリットを感じているとのこと。
また、先にも触れたように、これまではデータの入手に1週間から10日間ほど要していたものが、オンライン提供サービスの導入後は、ほぼその場でダウンロードできるように。これら入手の容易さから、活用が格段に広がっているという。

訴求力の底上げや合意形成が進むと共に設計の品質も向上

現在は全7本支店設計部での活用が進んでおり、「景観シミュレーション」のほか、計画建物から眺めを確認する「眺望シミュレーション」の作成にも使用され、建築主プレゼンテーションやコンペ案件の他、社内検討にも役立っているとのこと。「特に時間の限られたコンペ案件においては、詳細な周辺環境をゼロからつくり上げるのは時間的に厳しい。データをインポートするだけで、手間を掛けずにビジュアル的な側面で訴求力向上にもつながっています」(馬場氏)。
また、社内検討におけるメリットについて、次のように語っている。「情報共有がスムーズになり合意形成が図りやすくなることで、検討に割く時間の質が高まったのは間違いないですね。計画建物のデザインにおいて、品質を上げるための本来業務により集中できるようになったと思います」(鞆野氏)。
このように利用範囲が広がることで、訴求力の底上げや合意形成が進み、設計の品質向上にも貢献しているとの評価があった。

今後は業務の全工程で活用できるものになることを期待

これまで述べてきたように、主に計画の初期段階において大きな効果を発揮している「3D地図データ」だが、今後の展開についても期待が寄せられている。「現在はこうした建築計画の初期段階のみで3D地図データを使っていますが、今後は具体的な設計段階はもとより、施工における領域での活用、そして竣工後の維持管理に至るまで活用するシーンが広がるかもしれませんね」(鞆野氏)との将来的な活用方法についての前向きなコメントがあった。
VRやゲームなど映像コンテンツにおいて3Dが普及し、当たり前のものになっている昨今、建築主、社内関係者との意思疎通においてゼンリンの「3D地図データ」は欠かせないものであるという竹中工務店。その思いを受け、ゼンリンは今後もさらに使いやすい環境を整えると共に、精度の高い「3D地図データ」としての発展を目指すという。

「3D地図データ」を活用したシミュレーションイメージ

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