知られざる地図の魅力に出会う場所
2020年6月、地図に関する貴重な資料を一般展示していた「ゼンリン地図の資料館」が一新され、「ゼンリンミュージアム」としてオープンしました。
展示コンセプトは「歴史を映し出す地図の紹介」。
展示物の大幅増加に加え、専任の解説員「Z(ズィー)キュレーター」が常駐し、展示説明の文章だけでは伝えきれない作り手の思いや歴史・時代背景などを、さまざまなエピソードを交えてご案内。歴史と地図のロマンの世界へ、訪れた皆様をいざないます。
本記事では、ミュージアム内部のようすや、Zキュレーターが語る歴史×地図の魅力の一部をご紹介します。
公開!ゼンリンミュージアム館内
常設展示は4つのエリアに分かれており、あわせて約120点の地図を展示するほか、期間限定の特別展示も予定されています。
館内床面にある「伊能中図(原寸)」は必見!ちょっとした日本縦断気分を味わえますよ。

ミュージアム館内見取り図

A イントロダクション
紀元前から15世紀ごろまでの人々の営みや世界観を映す地図の紹介

B 世界の中の日本
紀元前から15世紀ごろまでの人々の営みや世界観を映す地図の紹介

C 伊能図の出現と近代日本
実測による正確な日本地図がもたらす日本の近代化

D 名所図会(ずえ)・観光案内図・鳥瞰図の世界
交通の発達による観光の一般化により広まった鳥瞰図や観光案内図を紹介

館内床面に原寸展示されている「伊能中図」と「Zキュレーター」たち。
専属キュレーターが語る「歴史を映す地図」の魅力
「ゼンリンミュージアム」の大きな特徴のひとつである、来場した方々へ地図の楽しみ方をご案内する専属の解説員「Z(ズィー)キュレーター」。
本記事では、現地に行けない方のために、Zキュレーターがミュージアムで語る歴史×地図のエピソードの中から、激動の時代・幕末の日本開国にまつわる「歴史を映す地図」をご紹介します。
開国というドラマの背景には、この地図があった
歴史が大きく動くとき、ひとつの地図が深く関わっていることがあります。そのひとつが、シーボルト「蝦夷と日本領千島絵図」です。
19世紀初め、江戸幕府による鎖国体制下で作成された、伊能忠敬の全国測量による日本地図。国防上、この伊能図は門外不出でした。
そんな時代にオランダ商館の医師として長崎に来たシーボルトと、高橋景保(かげやす)という幕府の役人は、日本のこと・外国の情報を知りたいという互いの利害が一致し、極秘に情報の交換を行い、景保は外国のさまざまな情報を、シーボルトは伊能図の写しを入手しました。これが発覚したのが「シーボルト事件」です。
その後、二人は罪に問われましたが、シーボルトは帰国を許された後、地図をはじめ持ち出した資料を基に『日本』という出版物を発行。その中のひとつに「蝦夷と日本領千島絵図」があります。これを手にしたアメリカのペリー提督が、その後、黒船とともに来日し、日本は開国への道を歩むことになるのです。
シーボルトが持ち出した伊能図の写しは、日本を大きく動かした地図であるといえるでしょう。

「蝦夷と日本領千島絵図」1852年 (Zキュレーター:城戸一貴)
いかがでしょうか。歴史の授業などで聞いたことがある、けれど内容の記憶は断片的。そんな「歴史上のキーワード」が、地図を軸に深みをもってつながっていくようすを、感じていただけたでしょうか?
ゼンリンミュージアムでは、他にもさまざまな時代・世界観を背景にもつ「歴史を映す地図」をお楽しみいただくべく、Zキュレーターが皆さまのご来館をお待ちしております。
館長より皆さまへメッセージ
「ゼンリンミュージアム」は地図の博物館ではありますが、単に貴重な地図を展示しただけではその魅力は伝わりません。そこで私たちは地図の背景にあった歴史、文化、人々の営みまでを深く掘り下げ、わかりやすく説明することで初めてその地図の価値や魅力が伝わると考えました。
館内では「Zキュレーター」が来場者の方に対してこうした解説を行い、地図の新たな楽しみ方をご提供します。ダイナミックな歴史と文化が映し出された地図の魅力を、より多くの方に感じていただけますと幸いです。

ゼンリンミュージアム館長 佐藤渉
ゼンリンミュージアム
所在地 |
福岡県北九州市小倉北区室町1-1-1 リバーウォーク北九州14F |
---|---|
開館時間 |
10時~17時(最終入館16時30分) |
休館日 |
毎週月曜日(祝日の場合は開館し、翌平日に休館) |
入館料 |
1,000円(保護者同伴の小学生以下は無料) |
アクセス |
JR・モノレール 小倉駅より徒歩10分/JR西小倉駅より徒歩5分
|
ゼンリンミュージアムへ行けない方にも。オススメ地図グッズのご紹介
「ゼンリンミュージアム」のある建物・リバーウォーク北九州の1階には、地図デザインのグッズ専門店「マップデザインギャラリー小倉」があります。
そちらでは、ミュージアムで歴史と地図のロマンの世界に触れた後のおみやげにピッタリな、日本の古地図やゼンリンの持つ地図情報を使用しデザイン化したさまざまなグッズを取り扱っています。
街の魅力を地図柄にデザインした「街まち」シリーズ。

mati mati 4グッズセット/福岡・天神
“日本らしい趣深さ”を地図柄で表現した「和まっぷ」シリーズ。

手水ハンカチ/浅草、がまぐち/大阪(百舌鳥・古市)
※今後オンラインショップ取り扱い開始予定(6/18現在)
ゼンリン所蔵の日本古地図をあしらった「古ちず」シリーズ。

レターセット/冒険心ジパング
地図の持つデザイン性の楽しさや奥深さを感じられるグッズたちです。ぜひチェックしてみてください。
地図という「文化」を継承する
「ゼンリンミュージアム」の設立には、ゼンリンの“地図文化を継承し、伝えていきたい”という思いもこめられています。
「地図柄」を活かしたグッズ展開も、そのひとつです。
目的地や場所を示すという地図の“機能”だけでなく、地図の新たな側面も、ゼンリンは提供してまいります。
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