資材置き場から搬入ルートまで。ゼンリンの地理空間情報が支える建設現場の「場所探し」

建設工事を円滑に開始するためには、資材置き場や重機の留置スペース、作業員用の駐車場、大型車両の待機場所など、工事に付随する多様な用地を事前に確保する必要があります。
これらは工事全体の進行を左右する重要な準備業務である一方、担当者の経験や属人的なネットワークに依存しやすいという課題が残されています。
こうした施工準備は、地理空間情報によってどのように効率化できるのでしょうか。
ヤード探しの実態と、ゼンリンの地理空間情報を活用した場所探し支援の可能性について、株式会社ゼンリンの田中淳也、星野史織に聞きました。

インタビュー写真(田中氏、星野氏)

(左から)田中氏、星野氏

株式会社ゼンリン

プロダクトソリューション事業本部 サービス企画二部 部長
田中 淳也

プロダクトソリューション事業本部 サービス企画二部 サービス企画一課 課長
星野 史織

※本記事は2026年6月のインタビューをもとに作成しています。

建設業務で活用できるゼンリンの地理空間情報

ゼンリンでは、不動産、建設、金融、自治体など、業界や業務ごとの課題に応じて活用できる地図データや各種コンテンツを保有しています。
建設分野では、住宅地図をベースとした土地情報の確認、大型車両のルート検索、図面作成に必要なデータの取得など、施工計画・施工準備に関わる業務を支援できます。
こうしたデータや機能を業務に合わせて組み合わせる手段の一つとして、セミオーダー型のクラウドサービス「ZENRIN Maps Studio」を提供しています。

工事の入口にある「ヤード探し」の負担

――建設業界における「ヤード探し」とは、どのような業務なのでしょうか。

田中氏:

ヤード探しとは、資材置き場、残土やがれきの仮置き場、重機置き場など、工事を安全かつ円滑に進めるための用地を確保する業務です。
一定規模以上の工事では、仮設の現場事務所の設置スペースや作業員用の駐車場、大型車両の待機場所の確保も求められます。
小規模な舗装工事であっても、関係車両の駐車場確保は必須となるため、工事の規模に関わらず発生する前提業務となります。

星野氏:

本業務は、工事の落札・受注後、現場を立ち上げる段階から速やかに開始されます。
必要な用地が確定しなければ、作業員の待機場所の確保や機材の搬入といった次の準備へ移れないため、まさに工事全体の進行を左右する重要な位置づけの業務です。

建設業の業務フローにおけるヤード探しの位置づけ ヤード探しは施工計画・施工準備段階で行われる重要な準備任務

――工事の規模と用地確保の関係を教えてください。

田中氏:

工事規模が大きくなるほど、扱う資材や重機、車両、作業員の数が増加するため、用地に求められる要件が変わります。
例えば特殊な大型重機を配置する場合は、その重量に耐えうる「地盤の強度」の確認が必要となるケースがあります。
また、解体工事においては、残土やがれきの仮置きスペースに加え、大型トラックが安全に転回・積み降ろしを行える動線の確保が不可欠です。

星野氏:

広い土地を見つけるだけでは不十分である点が、この業務の難度を高めています。
現場までの距離や移動動線、道路の幅、高さ、重量などに関する複数の通行条件を満たさなければ、ヤードとして利用できません。
もし大型車両を現場周辺の路上で待機させれば、交通渋滞や事故のリスクを招くため、安全な待機場所と通行可能な搬入ルートをセットで検証する必要があります。
特に、建物が密集する都心部の再開発工事などでは、交通規制や搬入時間の制限を考慮しなければならないため、極めて緻密な計画が求められます。

人脈を頼り現地を歩く。場所探しに残るアナログな業務

――一般的に、用地の候補はどのように探されているのでしょうか。

田中氏:

現状は各社が保有するネットワークや、ベテラン担当者が長年培ってきた土地勘に依存しているケースが少なくありません。
そうした情報がない地域では、現場監督をはじめとする担当者が現地に赴き、周囲を巡回しながら借りられそうな空き地や駐車場を探しています。
無償の地図サービスで当たりをつける手法も一般的になりつつありますが、候補地を発見した後は、地番を確認し、登記簿謄本から所有者を特定し、そこから交渉を開始するというプロセスを辿るため、多大な工数が割かれているのが実態です。

星野氏:

さらに、建設業界特有の重層的な請負構造に起因する非効率も生じています。
元請け企業が資材や重機用の大型ヤードを探索する一方で、協力会社は自社の作業員用の駐車場を個別に探すケースがあります。
つまり、同じ現場の周辺情報を、異なる事業者が個別に、重複して調査するという状況が発生しやすい環境にあります。
用地確保を専門に行う代行業者へ外注する選択肢もありますが、繁忙期など依頼が集中する時期には回答まで時間を要する場合もあります。

――建設業界でDXが進む中、場所探しはまだデジタル化の余地が大きいのでしょうか。

星野氏:

業界全体が人手不足の中、インフラ設備の老朽化に伴うメンテナンス需要は増加傾向にあるため、現場の業務負荷は高まっています。
業務効率化のためにデジタル技術やAIを活用しようという意識は高いものの、ヤード探しは全体でみれば限定的な業務であるため、DXの対象として十分に認識されていない側面があると考えられます。

田中氏:

一方で、現地調査の効率化や、土地情報の可視化、登記情報の確認など、デジタルデータを用いた合理化の要素は多く残されています。
これまで大手ゼネコンや元請け企業を中心に進んできた建設DXを、施工準備段階の周辺業務にまで拡張していく余地は大きいと捉えています。

空き地・駐車場を可視化するゼンリンの地理空間情報の強み

――建設会社からは実際にどのような相談が寄せられているのでしょうか。

建設現場周辺の駐車場確保や遊休地・空き地探索に関する活用について話すゼンリンの星野氏
星野氏:

施工現場周辺における関係者用駐車場の確保や、大型車両が待機可能な遊休地・空き地の探索に関するご相談をいただくケースがあります。
ゼンリンが保有するデータの活用事例として、風力発電施設の建設に伴う相談が挙げられます。
風車のブレード(羽)を運搬する大型特殊車両を安全に留置できる候補地を、当社の地理空間情報を利用して探索できないかというご相談をいただいた例です。
一般的な駐車場探しから、特殊輸送を支える大規模な用地探索まで、地理空間情報は多様な要件の検討に活用できます。

――ゼンリンの地理空間情報は、建設工事の場所探しにおいてどのように活用できるのでしょうか。

田中氏:

現地で行っていた調査業務の机上調査への転換は、支援の代表例のひとつです。
例えば「施工現場の中心点から半径〇km以内」といった条件を指定することで、範囲内にある空き地や駐車場の情報を抽出し、地図上に可視化します。
さらにシステム内で地番を確認し、登記情報の取得や地権者への打診へのスムーズな移行が可能です。

星野氏:

候補地の抽出後は「大型車ルート検索機能」がサポートします。
ゼンリンが保有する道路の高さ、幅、重量制限などの規制情報を基に、規制に抵触しないルート候補を机上で確認することで「土地は確保したものの、搬入車両が手前の道路を通行できない」といった手戻りが生じるリスクを抑えます。

また、将来的には、所有者情報や連絡先、過去の利用実績を地図上に蓄積し、自社のノウハウとして再利用する活用も考えられるでしょう。

ゼンリンの建設向けソリューションは、候補地抽出からルート検索までを支援 将来的には、ノウハウとして活用できる情報蓄積も目指す

空き地や駐車場を地図上で可視化可能

――ゼンリンが提供する地理空間情報にはどのような強みがありますか。

田中氏:

データの「鮮度」と「情報の解像度」の高さです。
ゼンリンでは、全国に配置された調査員が実際に現地を巡回し、最新の情報を収集しています。
都市部では毎年、地方においても一定の周期で更新を行い、変化が生じた情報は逐次調査によって補完しています。
この精緻な時空間データベースがあるからこそ、建物一つひとつの用途や、空き地の区画情報、駐車場の細かな属性データまで蓄積できているのです。

星野氏:

もう一つの強みは、営業拠点ネットワークによるサポート体制です。
私たちは単に一律のシステムを提供するだけではありません。
各地域に根差す建設会社様の元へ地元の営業担当者が伺い、地域特有の制約やお客様固有の課題を踏まえて柔軟な提案ができる点が、当社データを活用した業務支援の強みであると考えています。

ベテランの土地勘を会社で共有できる情報資産へ

――用地探索のデジタル化は、企業の組織運営や経営面にどのようなメリットがあるのでしょうか。

星野氏:

実際の事例として、用地手配の代行業務を行う事業者様での成果が挙げられます。
従来は依頼を受けるたびに現地へ出張し、徒歩で土地を探索していたため、多大な出張コストと日数がかかっていました。
ゼンリンの地理空間情報を活用することで、下調べを机上で進められるようになり、現地確認はピンポイントで済むため、出張・延泊コストが大幅に削減されました。
さらに、土地勘のない地域からのご依頼にも、即座に机上で調査・回答ができる体制が整ったことで、対応エリアが全国へ拡大し、受注件数の増加につながった例もあります。

田中氏:

組織運営の観点で期待できるのは、属人化解消への寄与です。
これまでベテラン社員の頭の中や紙の台帳で管理されていた土地情報や交渉のノウハウが、地図上の共通データとして組織に蓄積できるようになります。
これにより、経験の浅い若手や新入社員も共通の手順で調査を進められるようになり、特定の人材に頼り切らない体制の構築が実現しやすくなると考えています。

地域の建設現場に寄り添う地理空間情報の活用へ

――今後、どのようにゼンリンの地理空間情報を建設業界の業務支援に活用する想定でしょうか。

建設業界向けソリューションとZENRIN Maps Studioの今後の展開について話すゼンリンの田中氏
田中氏:

私たちが目指すのは、建設業務のバリューチェーン全域をカバーするソリューションの提供です。
建設業界の実務には、地理空間情報が貢献できる場面が数多く存在しています。
現場の多様なニーズをくみ取りながら、必要なデータや機能を業務に合わせて提供できる形へと継続的に拡張させていきたいと考えています。
その拡張性を支える基盤の一つが、セミオーダー型のクラウドサービスである「ZENRIN Maps Studio」です。
今後も建設業界の業務課題に応じた機能をZENRIN Maps Studio上に順次搭載し、現場で使いやすい形で提供していくことを目指します。

星野氏:

目指しているのは、元請け企業から協力会社、そして現場で実務にあたる作業員の方々に至るまで、すべての関係者が共通の情報にアクセスできる環境の構築です。
ゼンリンが建物や土地に独自に付与しているユニークなIDを情報管理の共通のキーとして活用することで、工程ごとに何度も情報を調べ直す工数が削減されるだけでなく、後の工程にも正確な情報を引き継ぎやすくなります。
事業者の入れ替わりがある業界だからこそ、信頼性のある情報を伝承していく体系が必要です。

田中氏:

ヤード探しにおいて、多くの時間と労力が割かれてきた「足で探す」業務を、地理空間情報から候補を導き出す効率的な業務へと転換していきます。
これにより現場の皆様が本来の業務や、安全・安心な施工に集中できるよう、データとテクノロジーの両面からサポートを続けてまいります。

星野氏:

不動産・建設業界の実務を支え、業務負担を軽減したいという思想が、当社のサービス開発の根底にあります。
用地探索に限らず、日々の実務において効率化の課題を感じている点があれば、まずは当社にご相談ください。
全国の営業拠点が迅速に対応し、ゼンリンが持つ最適な情報と機能を、業務課題に合わせた形でご提案いたします。

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