地理人コラム

地図から見えること「台地のようす」

2016/10/27時点の情報です。

地理人です。
みなさまいかがお過ごしでしょうか。
地図のコラムながら、これまで地形の話をする機会がありませんでした。
さて、本日は地形のお話、「台地」についてお届けします。

川や波が削ってできた「台地」とは

台地とは、台のように周囲の低地に比べて盛り上がっている平らな土地のことを言います。特に日本で多い「洪積台地」は、「周囲に比べて盛り上がった」のではなく、「川や波が地表を削った結果、川や海沿いの標高が下がり、相対的に削られなかったところが台のように残った」ことでできました。

台地の上と下で何が違う?

今回は洪積台地の上(台地)と下(低地)でどんな違いがあるかについて追っていきたいと思います。
台地と低地で最も異なるのが水利です。低地は川の水を引くことができ、水稲の栽培が可能となります。一方で台地の上は、川の水を引くことができず、農業には適しません。水道が整ってきている現代ではほとんど意識しませんが、水は人の生活に必要で、水をいかにして引くかはとても重要でした。そのため低地には農地とそれを耕す人が多く住み、台地には農地も人もまばら、という状態が一般的でした。

東京郊外にはこのコントラストを感じられる場所が多々あります。 台地の下には古くからの集落があり、台地の上は都市化してから開発されたものが広がっている、という構図です。そのひとつである相模原市(神奈川県)の地図をみてみましょう。

地図の左側が低地、右側が台地です。台地と低地を分ける崖線には茶色の破線を入れました。真ん中にはよく見ると等高線があり、中央部を左右に貫通する道も少なく、あっても曲がっており、きつい傾斜があることが想像できます。
地図の左側の低地はいくつかの川が流れ、細く曲がった道(古くからある道であることが推測できる)も多く、古くから農業を営む人々が住んでいたことが想像できます。また、地図の右側の台地は、大学や公園、スタジアムなど、都市化して以降にできたものが集中しており、道も太く直線的です。こちらは建物も少なく、まだあまり人は住んでいないようです。

台地と市街地

古くから都市だったところは、台地にも古くから多くの人が住んでいます。低地は人が集まりやすく、市街地になる傾向がありますが、台地の上は街にはならず、住宅地になる傾向があります。東京でも上野(台東区)や秋葉原(千代田区・台東区)は東京有数の市街地ですが、低地にあります。そこから坂を上った本郷(文京区)は一転して住宅地ですが、こちらは台地です。台地と低地の境目に点線を引きましたが、右側の線がその境界です。交差点名も右側が「坂下」が多いのに対して、地図の中央部は「坂上」が目立ちます。また、左側の線の左側も低地ですが、こちらは「坂下」が見られます。

大阪でも、都心の難波や心斎橋は低地です。地図の左側は、難波や心斎橋からほど近い長堀橋ですが、建物は大きく、ビルが多いことが読み取れます。地図の右側は建物の大きさが小さく、こちらは民家が多いことが読み取れますが、右側は小高い丘(上町台地の一部)になっています。

ただ、その逆で、台地の上に市街地が形成されるケースもあります。たとえば名古屋市の栄がそうですが、大都市ではレアケースといえます。ここでは、台地と市街地の標高差が大きい飯田市(長野県)に注目してみましょう。茶色い破線のあたりには複数の等高線が集中し、地図下部の川(松川)と、飯田駅や飯田市役所があるエリアは大きな標高差があります。松川沿いを走るJR飯田線の車窓から飯田市街地を見ると、まさに「丘の上の街」が見えて、絵になる風景です。その後電車は坂を上り、丘の上の街にある飯田駅に向かうのです。

近くにある同じ平地でありながら、異なる世界が広がることもある台地と低地の世界。
一つの地域で二度おいしい、台地へのお出かけを楽しんでみてはいかがでしょうか。

地理人(今和泉 隆行)

地理人(今和泉 隆行)

1985年鹿児島市生まれ。7歳のときに道路地図やバス路線図を書き始める。
1997年に実在しない「中村市」の都市地図の原形を書き始め、現在も改正中。
主な著者「みんなの空想地図」白水社

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