地理人コラム

空想地図制作の裏側「これも地図?」

2017/10/25時点の情報です。

こんにちは。夏から秋にかけて、全国的に気温の上下幅が大きく体調を崩しやすい季節ですが、いかがお過ごしでしょうか。
今回は、空想地図(筆者が作る、実在しない都市の地図)制作の裏側をお届けします。地図以外にも、空想都市の路線図やフロアガイドなど様々なものを作っていますが、それらの見方を変えれば地図とは何かが見えてきます。作例とともに紹介しましょう。

地図の中でも、鉄道の情報だけを抽出しているものが鉄道路線図です。地図のようですが、実際の地形は表現せず、位置関係がきれいに見えるようにデフォルメしてあります。一般的な地図にも鉄道路線は載っていますが、鉄道しか載っていない鉄道路線図の意義はなんでしょうか。それは、鉄道に乗る人にとって必要な情報だけを載せ、惑わせないようにするためです。このように、「1つの目的に特化した地図」は、他にもバス路線図、航路図、目的地へのルートマップなど、多々あります。
一般的な地図はいわば、あらゆる目的地や移動経路などを重ねて載せたものです。それゆえ情報量が多く、煩雑に見えるかもしれません。地図を読み解くには、大量の情報の中から必要なものを自分で選びぬかなければなりませんが、ネットやアプリの地図は、それを自動的に行ってくれます。検索することによって目的地や経路が出てくるように作られており、最初から出ている情報は最低限です。目的地と経路などのピンポイントな情報を調べるのに便利ですが、全体像はつかめません。
一方、鉄道路線図の場合は、鉄道に乗る人に必要な情報に絞りつつも鉄道網の全体像も読み取ることができます。このように、見たい範囲や目的によって表現方法を変えつつも、いろいろな地図が存在しています。

大きな商業施設には必ず置いてあるのが、フロアガイドです。どこにどんなテナントがあり、どのくらいの広さか、どこにエレベーターやエスカレーターがあるかが見て取れる、「立体的な地図」とも言えます。また、多くの場合、テナントの種類によって背景色が分類されています。決まったルールはなく、商業施設によって独自の色付けがなされています。このため、色を見ただけでどんなテナントがどのフロアに多いのか、一望することができます。なお、このフロアガイドでは、桃色がレディスファッション、薄紫色がレディス&メンズファッション、水色がアクセサリー&雑貨となっています。(架空のブランドを大量に作らないといけないので、全てのフロアを作るには至っていません。)

続いて、「最も拡大した地図」とも言える、住宅の間取図です。これは空想の間取図ですが、実際の間取図は、引越しの際に、複数の物件を比較検討して見ることが多いと思います。どこに何を置いて、どんなときにどこに居ると落ち着くか、そんなことを想像しながら間取図を見る人は多いでしょう。さて、そんな間取図の見方を地図にも応用することができます。どこで寝て…つまりどこに住んで、どんな通勤ルートで、その途中に何があるといいか、どこで買い物をするか、余暇はどう過ごすか…など想像しながら位置関係や全体像を、地図で見てみるのもおもしろいでしょう。

今回は、一見地図と直接関わりがなさそうなものでも、見方を変えれば「地図」と言えるものを紹介しました。さらに、その見方を地図に応用することで、地図の新しい視点を見つけることもできます。
また、今回紹介した空想地図や空想の間取図などを、2017年12月3日(日)まで、宮崎県の都城市立美術館にて展示しています。近くへお越しの際はぜひ、お立ち寄りください。
「MESSAGE2017 南九州の現代作家たち」

次号は12月末、いっそう寒くなった頃に、地図から見えるお話をお届けしますので、お楽しみに〜。

地理人(今和泉 隆行)

地理人(今和泉 隆行)

1985年鹿児島市生まれ。7歳のときに道路地図やバス路線図を書き始める。
1997年に実在しない「中村市」の都市地図の原形を書き始め、現在も改正中。
主な著者「みんなの空想地図」白水社

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