2018/02/27時点の情報です。
今年の冬は厳しい寒さとなっておりますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
今回は、地図から見える地名の話をお届けします
都市部だと馴染みのない方も多いと思いますが、もともと農山村だった地域を記す住所は「大字(おおあざ)」と「字(あざ)」に分けられます。大字は江戸時代の村を継承した範囲・地名で、字は大字より小さい集落のまとまりにつけられた地名です。明治以降、小さな村は何度も合併を繰り返し、今の市町村の大きさになりますが、江戸時代の村は、今でも市町村内の大字や町名として残り、字は市町村によっては消滅しています。それでは地図を見て、現在の町名の成り立ちを見てみましょう。
こちらは福島県郡山市の地図です。黄色で塗った部分が町名で、「三穂田町川田」となっていますが、ここは江戸時代「川田村」だった範囲です。川田村は、3回の合併を経て「三穂田村」となり、この辺りの住所は「三穂田村 大字川田」となります。さらに郡山市と合併すると「郡山市 三穂田町川田」となり、ひとつの町名の中に、「三穂田」という合併後の村名と、「川田」という江戸時代の村(その後の大字)があわさった町名となったのです。また、水色で塗った範囲が「字」ですが、半径100mほどの歩ける範囲にたくさんの字があります。住所表記では町名の後に「字◯◯」と続きます。そのため、「郡山市三穂田町川田字東藤ノ木◯◯番地」のように、たくさんの地名が詰まった住所になります。
続いて、京都市左京区の地図です。山間ですが地名は小刻みに振られており、どこも町名の頭に「鹿ケ谷」と入っています。「鹿ケ谷◯◯町」の「鹿ケ谷」は以前の大字で、その後に続く地名「○○」は字だったものです。このように、大字と字をそのまま組み合わせた長い町名は、京都市市内の多くの地域で見られます。
京都市の住所もまた、「京都市左京区鹿ケ谷御所ノ段町○○番地」のようにたくさんの地名が詰まった住所になります。
こちらは東京都八王子市の地図です。京都市の地図と同じく山に囲まれていますが、京都市と異なるのは、地名表記が少ないことです。この近辺の住所は、「八王子市鑓水○○番地」となり、町名(以前の大字)はあるものの、「字」は失われています。以前は字がありましたが、このようになくなるケースもあります。なお、その場合でも、自治会や公民館、バス停名として残ることがあります。
このように、江戸時代の村名由来の大字は、都市化しない限り、多くの場合大字や町名として残ります。一方で字を残すかどうかは市町村によって異なり、残らないケースも多々あります。みなさんの住所はいかがでしょうか。次号をお送りする4月末は、暖かくなっていることを願いつつ・・・次回もお楽しみに。
地理人(今和泉 隆行)
1985年鹿児島市生まれ。7歳のときに道路地図やバス路線図を書き始める。
1997年に実在しない「中村市」の都市地図の原形を書き始め、現在も改正中。
主な著者「みんなの空想地図」白水社