地理人コラム

地図から見えること「建物の大きさ」

2017/12/26時点の情報です。

こんにちは。地理人です。
やっと2017年に慣れてきたと思ったら、あっという間に2017が終わろうとしています。皆様いかがお過ごしでしょうか。
年末年始は自宅で過ごす人もいれば、故郷に帰る人もいると思います。
そこで、自分の家とは違うサイズ感の家と対面する人もいるかもしれません。
地域によって建物の大きさは随分異なるのです。今回は地図で、家の大きさを比べてみましょう。

東京では珍しく、戦災で焼けることなく残った古い建物が密集している、墨田区京島の地図です。太い直線的な大通りに囲まれた中にある道の曲がり具合が特徴的ですが、目を凝らして見ると、より細い道がたくさんあるのが分かります。この細い道沿いには、小さな建物が密集しています。街は写真のような下町風情がありつつも、古くから続くお店から、アートスポットまで存在し、その様相はさまざまです。なかでも、築70年の風呂なし長屋が若者の住処になっているのは特徴的です。

それでは、より古い街を見てみましょう。古い街と言えば、平城京…いまの奈良市の地図です。地図の範囲は「ならまち」と呼ばれるエリアで、奈良市中心市街地南東部の、歴史的な町並みが続く地域です。道路から見ると建物は小さいように見えますが、奥行きが深く、細長い建物が多くあります。江戸時代以前から続く街では、道路に面した間口の幅によって税が決められる例(間口税)が多く、細長い建物が多いのはこの影響が大きいとも言われます。

では一気に都市から山村に飛んでみましょう。長野県の山間部、根羽村の中心部の地図です。これまでの地図とは異なり、建物がなく等高線が引かれる山が現れますが、家の大きさも、さきほどより少し大きくなっています。こちらもまた、道路に面した間口の幅よりも奥行きのほうが長く、見た目以上に家の大きさは広いと言えるでしょう。

続いて、北海道は札幌市の都市郊外、北広島市の住宅地の地図です。写真に写っている家々は、北海道や北東北特有の、積雪を避けるための斜度の高い屋根になっています。北海道と言えば広大な大地ですが、それを象徴するかのように、郊外や農村部の家も広めです。地図を見ても、建物が大きく、建物と建物の間隔がかなり広いことが読み解けます。

最後に番外編です。広い道に囲まれた区画が正方形に近い長方形で、建物は真ん中に空洞のある"□"の形をしています。実際に行ってみると写真のような、外観の凝った集合住宅が連なっています。さて、真ん中の空洞はどうなっているかと言うと…小さな公園のような広場のような、そこに住まう人のオープンスペースになっています。

地図を見て、大きなビルや、不思議な形の建物等、特徴的な建物を探すのもおもしろいですが、ふつうの住宅地を眺めていてもこのように発見があります。そして色々な地域を見比べると、大きさの違いも分かります。その際、縮尺(メートルの表記)を揃えて見て下さいね。広い家がいいような、小さな家が連なる風情もいいような…。ちなみに私は今、小さな建物が密集する街の、築55年の小さな木造家屋に住んでいます。

最後に、今年も読んでいただきありがとうございました。来年もどうぞよろしくお願い致します。残りわずかですが良いお年をお過ごしください。

地理人(今和泉 隆行)

地理人(今和泉 隆行)

1985年鹿児島市生まれ。7歳のときに道路地図やバス路線図を書き始める。
1997年に実在しない「中村市」の都市地図の原形を書き始め、現在も改正中。
主な著者「みんなの空想地図」白水社

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